八重歯ってかわいい? ~糸切り歯(犬歯)の重要性~

  ファーストフードやカレーなどやわらかくて、あまり噛まなくてよい食材が増えている現在、日本人のあごは小さくなっているようです。
一昔前までは、親知らずが生えるスペースがなくて、斜めに生えたり、手前の歯に引っかかって生えてこなくてトラブルになっていましたが、最近では親知らずのひとつ前の歯(第2第臼歯)の生えるスペースすらなくて、正常に生えない方もいらっしゃいます。

あごが小さくなるに伴い、歯の大きさもコンパクトになってくれるとよいのですが、そうはうまく行かないようです。

 歯の生えるスペースが足りなくて、歯並びがデコボコになるのが叢生です。
左右の犬歯の間の幅はあごの成長に伴い、永久歯に生え変わる間に、3~4mm広くなるといわれています。(乳歯の時は「すきっ歯」の方がむしろ正常なのです。)この隙間を利用して、しかも乳歯よりも外側に永久歯が並ぶことで、乳歯より大きな永久歯がきれいに並びます。
乳歯の時にあごが小さく、「すきっ歯でない」お子さんは叢生になる可能性が高いと言えます。

犬歯は周囲のよりも遅く生えるので、生えるスペースがないと、外側にはじき出されたようにして生えてきます。

日本では八重歯 といわれ、昔はアイドルなどでも、『八重歯がカワイイ』といわれた人もいるようですが、八重歯がかわいいのは日本だけのようです。
欧米では「ドラキュラの歯」中国では「トラの歯」といわれ、評判がよくありません。
日本で、「八重歯がかわいい」と言われていた女子も、アメリカに留学すると「あなたはなぜ留学するほどの経済状態なのに、矯正をしないのか?」と聞かれることもあるようです。

 アメリカなどは矯正をすることが、ステイタスであり、ご高齢の方でも矯正しますし、わざと目立つ矯正の装置やゴムを入れて、見せびらかすような感があります。
スポーツ選手もビジネスマンも国際派は 「歯と歯並びがキレイ」が重要なのです。

ところで、八重歯の場合、「犬歯が外にはじき出されて見た目は悪いのだから、犬歯を抜けばいいじゃない」と思われませんか? 
けれども歯科医は、小臼歯(犬歯の後ろの歯)を抜いてでも、わざわざ犬歯を抜かずに矯正します。
なぜだと思われますか?
実は犬歯 特に上顎(上の)犬歯は歯の中でも非常に重要な役割をしている歯なのです。
そのため犬歯は歯の根が最も長く、丈夫に出来ています。歯ぎしりをしている最中に、上下の犬歯同士がこすれている間、他の奥歯は休憩しています。「犬歯によって奥歯は守られている」といっても過言ではないのです。

犬歯があるのとないのでは、ご高齢になって、歯周病になったときなど、大きな差がでます。
また、犬歯が正常に機能することはあごの関節の負担も軽減します。
 八重歯になっていて、犬歯がかみ合わせに参加してない場合、犬歯がないのと同様、歯やあごのトラブルのリスクは高まります。
このような理由で、歯科医は動かすのが大変でも犬歯を抜かずに噛み合わせを作っていきます。

歯周病の治療とかみ合わせの治療をしてゆくうえでも、犬歯のかみ合わせの状態、歯周病によるダメージの程度によって、治療の範囲と程度は変わってきます。
犬歯は人間の口にとって鍵となる大切な歯なのです。

最後に余談ですが、現代人は糸を切るのは「はさみ」で、瓶ビールの栓は「栓抜き」で抜きましょうね。

このブログの人気の投稿

歯の話の目次

定期健診(メインテナンス、SPT(Supportive Periodontal Therapy))ってなに?

歯科治療と価格