医学、医療(臨床)、医療制度はイコールではありません
医学というのは自然科学の1分野として系統だった学問であり、整理された簡潔な条件での実験結果や研究の積み重ねを基にしたものです。(日本歯周病学会)
他の科学同様、基礎的な研究の積み重ねが、歯科医学においても大切です。正しいといえば正しいのですが、それはかなり限られた条件内で成立する話です。
ごく初期のむし歯が再石灰化して治るというのは実験室の中のような限られた環境では事実として再現可能かもしれませんが、実際のすべての患者さんで出来るわけではありません。
医療(臨床)は医学における研究結果などを元に、実際の患者さんの治療に応用することです。(日本臨床歯周病学会)
患者さんの生活環境、希望など様々な要因や条件が付与されるので、医学のように単純には行きません。医学=臨床ではありません。
(そもそも、医学における動物実験でも結果にばらつきがあるのですから)
頻繁に甘くて酸性の炭酸飲料を飲み、歯磨きが完璧に出来ていないお口の環境の中で再石灰化させるのは容易ではありません。
社会保障制度が整備されるまでは臨床(医療)=自由(自費)診療でした。しかし現在では、医療は健康保険制度の制限がある保険診療と自由に医療を提供(享受)できる自由診療とに分けることが出来ます。(現時点では混合診療は認められておりません)
医療制度は健康保険に代表される「政治的に決められた医療サービスを国民や市民に提供するシステム」であり、その内容は政治的に決められるので、現時点で医療として応用可能なすべての検査法、治療法をカバーしているわけではありません。
「むし歯になりやすいかどうかの検査法」などはむかしからありますが現在の保険制度では認められていません。
医学が「機械工学」だとすると医療(臨床)は「実際の自動車作り」に例えることができます。機械工学や人間工学などを応用して、皆さんの多様なニーズに応えるべく様々な車種が作られますが、そのうちの一車種が「医療制度」と言うことができます。
現在日本で起こっている医療の問題はほとんどがこの「医療制度」が機能せず崩壊しているからであり、皆さんが政治の力を動かすことが出来れば改善可能です。