歯周病って治るの?(ウソでもいいから大丈夫といって。)

 もしあなたがガンになったとします。
「大丈夫あなたのガンは治りますよ」と言ってくれるA先生と
「5年生存率は50%ですが最善を尽くします。一緒にがんばりましょう」と正直に言うB先生とどちらがいいですか?
本当は治らないのに、ウソをついているんだけど、多くの方はA先生がよいのではないでしょうか。
「もうあなたは手遅れです」なんていわれると、希望も何もなくなり意気消沈してしまいますよね。わらにもすがる気持ちで「何か助かる方法はないだろうか」と考えるのも自然ですし、ご家族にしてみれば、「できるだけのことをしてあげたい」と思うのも納得できます。

こういう話のときに、結果がよければ、つまり、治れば問題になることはありません。
問題になるのは「サルのコシカケ」など 代替医療などに高額の費用がかかったにもかかわらず結果が思わしくないときなどです。

 こういう人の弱みに付け込むようなビジネスが存在するようです。結果が思わしくなくても、「多くの方は、治るという言葉を私が信じたのだからしょうがない・・・」でしょうか。
つまり、「コストや治療にかかる時間とその結果(費用対効果)で納得がいくかどうか」が問題になるのですが、極端なトラブル例が「訴えてやる・・・」ではないでしょうか。

では、糖尿病ではどうでしょう。
「糖尿病が完治する」と言い切るお医者さんは そういないと思います。
患者さんのほうも、糖尿病についての理解が深まり、「これ以上悪くしないように上手に糖尿病と付き合っていこう」と考えられるのではないでしょうか。(まあ糖尿病が治ると言っている健康食品もあるようですが・・・何をもって治ると言うのか、「治る」の定義が問題です。)
歯周病はガンのように命に関わる病気ではありませんが、 >糖尿病や心臓病との関係が科学的に証明されつつあります。 生活習慣病ですからどちらかと言うと糖尿病や高血圧に近いのではないでしょうか。

 それでも、患者さんが歯科の門をくぐる時、「歯科医からなんといわれるだろう。悪いと言われるのではないだろうか」という不安と「大丈夫!治りますよ」と言う歯科医の言葉を期待されて来院されると思います。
 歯周病が他の生活習慣病と異なるのは、その病気本体(歯周病)だけでなく、失われてしまった歯などの、機能回復、見た目の回復などの治療が必要になることが多いことです。義歯やかぶせ物を作ったり、場合によってはインプラントなどの治療が追加され、患者さんにとっては高額な治療費になることもあるでしょう。

 そうした時に、もし結果が思い通りにならなかった時に、あなたは納得されますか?
「治ると言うから信用して、あれだけ時間と費用をかけて治療したのにもう悪くなるなんて・・・」
「こんなことならあの時はっきり「治らん」といってくれればよかったのに・・・ウラメシヤ~」

「ドクターは親切心でうそをついたのかもしれませんし、そうではないかもしれません。」
ドクターの治るの「定義」とあなたの治るの「定義」が一致していなかったのかもしれません。

このようなトラブルにならないためには よいことも悪いこともありのままの状態を説明してもらい、治療のメリット、デメリット、治療後のメインタナンスの間隔など十分にドクターと話し合ってから治療にかかったほうがよいと住人は思います。

これと同様な患者さんの問いかけで、治療内容のカウンセリング後に「先生、今回は治療しないで様子を見ても大丈夫ですか?」と質問される方がいます。
患者さんがこういう質問をされるのは「今は治療したくない、しなくていいと言ってほしい」と言う気持ちが見え隠れしています。
「大丈夫」と言ってほしい。気持ちは理解できます。

 我が家の場合しかコメントできませんが、我が家では治療の説明の時には「様子をみた方がいい場合」、「様子を見てよい場合」と住人が診断すれば、患者さんから聞かれなくても 説明の中でその旨を説明します。
多くの場合、治療しないでおいておくと、状況が悪化するばかりでなく、治療期間、費用もより高額になり、しかも治療結果は今治療に取り掛かるより思わしくないことになります。
しかも、今治療しないで大丈夫かどうかは歯科医が決めることでなく、あなたの体や生活環境が決めることが多く、歯科医が判断できないことが多いのです。

 皆さんにとっては、空気を読んで、会話に波風立てずに、自分の望む返事をしてくれる歯科医が、「優しい、よい先生」と評価されることでしょう。
お気持ちは察します。察しますが、住人が仏心を出して、様子を見てもいいのですが、その結果、患者さんが後で後悔する姿を見ると、「嫌な顔されても言うべきだったかな・・・」と思うことがあります。
患者さんに本当のことを言うことで嫌われて、場合によっては評判を下げてしまうのです。口の利き方が非常に難しい仕事です。

 さああなたはどの程度までのウソなら許しますか?
どんなお医者さんと、どんな付き合い方をしたいですか?

 住人のスタンスは以前からも書いていますが、多少冷たい感じがして評判はよくないかもしれませんが、「正直」がモットーです。(住人は高度な駆け引きややり取りが苦手です。人は住人を直球勝負の人間と言います。)
先生が治療を勧めているのに治療しなければ、「ばつが悪い、筋が通らないので、自分の変に受け取られるかも・・・」とお考えになる方がいらっしゃるかもしれませんが、我が家ではそうは思いません。そんな患者さんの感情もふまえて、ぶっちゃけ正直に腹を割って患者さんと話し合いたいと思います。
患者さんがどう考えていようと、例えそれが歯科界の常識から外れていようと、「患者さんの希望が尊重されるべきです」(ただその結果責任までは負えませんが)

「患者さんの希望が何よりも第一」、次に「プロとしてのアドバイスをご希望されれば、いくらでもしますが、最終決定は患者さんがなさってください」そして、「これ以上悪くしないために歯医者さんと共に可能な範囲で、がんばっていきましょう。そして、QOLの向上のために、無理をしない範囲で治療内容を決めましょう。それで悪くなったらしょうがない。」、(これはあくまでも我が家のスタンスです。)

プロのアドバイスとしては「信頼できる、あなたが好きな歯医者さんで見てもらいましょう。そうすればトラぶらないでしょう。」

「歯周病って治るの?」の質問の意味にはもうひとつの側面があるのではないでしょうか。
それは「どうせ治療しても治らないんだろ?治らないんだったら治療しても無駄ジャン」という諦めのような感情です。
こうお考えだったとしたら、それは違うと思います。治療しなかったら今のままでなく、どんどん悪くなります。(脅しているわけではありません。多くの患者さんを見て思うことです。)

最後に「歯周病って治るの」と疑問に思われている方に逆に質問です。
歯周病の治療をしても若い頃のように元通りに治らないなら治療をよしときますか?

※歯周病は放置するとどんどん進行してしまいます。完全に歯周病にかかる前の状態に戻すことは難しいかもしれませんが、きっちっと治療すれば、進行を止めることも可能です。これ以上悪化させないためにご自身でのプラークコントロールと、歯科医院での検査、治療、メインテナンスをお勧めします。

歯周病が治るかどうかの答えの参考サイト
>>>歯周病は治りますか?
  >>> 歯周治療について

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