歯並びと矯正治療
日本の芸人さんの場合、海外のタレントさんと比べて、歯並びに問題があってもあまり気にせずにテレビに出演している様に住人には思えます。そしてそこからも日本人の歯並びに対する関心の低さがうかがえます。松坂大輔投手は矯正してから渡米したそうです。マラソンの土佐礼子選手は北京オリンピックでは残念な結果でしたがオリンピックに備えて3年間矯正したそうです。
見た目だけでなくスポーツ選手としてパフォーマンスを向上させるためには噛み合わせは大変大切です。
そこで本日は歯の矯正のお話です。
我が家でも歯列矯正を行っております。しかし住人はいわゆる一般開業医であり、矯正専門医ではありません。あらかじめお知りおきください。
歯並びが悪いと何が問題なのでしょう。
- むし歯や歯周病になりやすい
- 歯が負担過重を起こし痛みやすい
- あごの成長、顔の形に影響が出る
- うまく発音できない
- 口もとが気になり、コンプレックスになる
- よく噛めないために胃腸障害が起こることがある
昔は歯並びといえば、見た目が患者さんにとっても矯正医にとっても大切でした。
しかしながら、きれいに前歯は並んだものの、あごの関節に問題が生じることもありました。
現在ではあごの関節に問題が起こりにくいように配慮することや噛み合わせを改善することが矯正医には求められます。言うのは簡単ですが、歯の大きさやあごの大きさなどそれこそ千差万別であり、これがなかなか容易ではありません。
「矯正治療」と一言で言ってもその目的、目標、方法は様々です。そこで今回は 矯正を始める前に知っておいていただきたい基礎的な事項をご説明したいと思います。
矯正の場合、一部の例外を除き(口蓋裂などの患者さんは保険で矯正できる場合がありますので、詳しくは専門医におたずねください)治療開始前の相談(カウンセリング)や検査から自由診療となりますので注意が必要です。
治療の開始時期について
一般的には前歯の永久歯が生え変わり、奥歯の乳歯が生え変わり始める頃から矯正治療を開始して、第二大臼歯が生え終わる中学生までの間に動かすのが一般的です。しかし、あごの大きさのアンバランスなど骨格性の要因がある場合、幼稚園くらいからあごを引っ張ったり、押したりする装置を入れることがあります。そして矯正をするために最適の乳歯の抜歯の順番などありますので、歯並びが気になったら一度歯科医に相談することをお勧めします。
中年になったから矯正は無理ということもありません。何歳でも歯並びが気になったら歯医者さんで相談されることです。
ただ、患者さんの社会的状況により矯正を開始する時期を考える必要はあります。
たとえば進学や就職、保護者の方の転勤などで、同じ矯正医に最後まで診てもらう事が無理になることがあるからです。
費用や責任の問題からいっても途中で主治医が変わるのはあまりお勧めできません。もしも転勤の可能性がある場合などは治療期間、転勤した場合の主治医の紹介、費用のことなどトラブルが起きないよう十分相談してから治療を開始しましょう。
早くきれいになりたいという気持ちもあるかもしれませんが、4年制大学に入学してからすぐに開始するのもひとつの方法かもしれません。
治療期間、治療法について
治療期間、治療法(費用)は歯並びの状態、重症度やご本人が希望するゴールによって異なります。本格矯正の場合通常月に1~2回の通院で、1~3年かかり、治療後は治療にかかった期間と同じくらい保定(後戻りしないよう歯固めする)期間の通院が必要になります。
装置も固定性のものや取り外しできるもの(可撤性)がありますが、可撤性のものは患者さんが入れてくれるかどうかが結果を左右します。つまり、患者さんの協力度によってなかなか歯が動かないことなどあります。
治療中はいろいろな装置が入るため、歯磨きがなかなかうまく出来ずにお口の中が不潔になりがちです。しかしながらプラークコントロールが十分出来ないと、きれいな歯並びを作るために矯正したのに、矯正装置をはずした時には歯がむし歯でボロボロとなってしまっては これは悲劇です。
悲劇といえば、何らかの理由で治療を中止したり中断することが最も悲劇です。治療を開始したら、辛抱強く治療を継続することが大切です。親御さんは矯正をしてあげたいと思っていても、ご本人が矯正に対してあまり関心がなければ、治療にも非協力的になってしまいます。お子さんの矯正治療の場合始める前に十分家族会議で相談しましょう。
治療直後はきれいに並んでいても、程度の差はあっても「後戻り」は必ず起こると考えておいたほうがよいと思います。治療終了時にも「保定装置」といって後戻りを防止するための装置を渡されることがあります。この装置を使っていただけるかどうかによっても「後戻り」は大きく左右されます。保定する期間は歯を動かすのに要した期間と同じくらい必要と考えられています。
がんばって矯正治療を乗り越えて、装置をはずした時の患者さんのうれしそうな笑顔はそれをお手伝いした者にとっても大変な喜びです。