歯と子育て1
子育てはヒトを一人前に育て上げる大変な仕事です。住人は子育てを家内にまかせっきりにしてきたので、えらそうな口をたたく資格はありません。
住人などは食いしん坊だからか、親から食べ物の噛みかたを習った記憶はないのですが、近年うまく噛めない、うまく飲み込めないといった子供さんが増えているそうです。我が家も時々相談を受けます。
そこで、どれだけ人様のお役に立つかわかりませんが、大きなお世話を焼きます。ただし、小児歯科専門医ではありませんので、以下「そういう考えもある」程度に読んでください。
○ お母さんのおなかの中から子育ては始まっている。
実はお子さんの歯はお母さんのおなかの中にいる時、胎生7週目くらいから、乳歯はもうできはじめています。そして乳歯が顔をのぞかせるころには、もう永久歯が育ち始めています。
お子さんのお口の健康は 妊娠から小学校の高学年まで保護者の方が注意してあげる必要があるのです。ではどのように歯を守り育てたらよいのでしょう。
○ おなかに赤ちやんがいるとき
昔のお母さんのなかには「子供にカルシウムを取られたので、自分の歯が悪くなった」と言われる方もおられますが、すでに出来上がったお母さんの歯からカルシウムが赤ちゃんに行くことはないようです。むしろ妊娠中の「つわり」などで十分歯磨きができなかったことが歯が悪くなる原因のようです。けれどもおなかの赤ちゃんのためにも ビタミンやミネラルなど栄養バランスのよい食事を取ることが大切だと思います。
○ 生後
母乳を中心に育てる
乳を吸う運動は、かむ運動の練習です。この時、顔全体の筋肉を使って吸っているのです。その運動で筋肉だけでなくあごの骨も育つのです。できれば、簡単に吸える哺乳瓶よりもおっぱいで育てましょう。
母乳は軽く吸えば簡単に出るものではありません。赤ちゃんが顔を真っ赤にして懸命に吸っているのは、あごや舌、口の周り、頭の脇、顔全体の筋肉を使っているため。その運動によって、頬筋や側頭筋などの噛む筋肉やあごの骨が育ち、食べ物を飲み込むための舌の使い方などを覚えることで、上手に噛むための練習を自然にしていきます。
生後6カ月を過ぎると、乳歯が生えはじめます。このころから、歯みがきが必要になります。
最初は前歯しか生えていないのでガーゼ等でふく程度でも大丈夫ですが、徐々に歯磨きする練習を始めましょう。この時期に大切なことは、歯みがきの習慣をつけていくことです。本人が歯ブラシをくわえて遊ぶのはかまいませんが、一日1度寝る前で結構ですからしっかり保護者の方が磨いて上げましょう。
赤ちゃんの時は座布団の上などに寝かせて、体がしっかりしてきたらひざの上に寝かしつけて、赤ちゃんの頭がわの上からお口を覗き込むようにして磨いてあげましょう。
歯ブラシの持ち方は鉛筆を持つようにして、歯ブラシを歯に当てたらやさしく軽い力で小刻みにみがいてあげましょう。ストロークを大きく強く動かすと歯ぐきにあたって痛いので、歯磨き嫌いになる原因になります。
上の唇を上にそっとめくってみてください。上の真ん中の歯の付け根当たりまですじ(上唇小体)がのびていると思います。このようなすじを歯ブラシで引っかいてしまうと痛がってはブラシさせてくれなくなります。
歯ブラシを持っていないほうの手でこのすじを軽く押さえてガードしてあげて歯を磨いてあげるとよいでしょう。
フッ素の入っている歯磨きペーストなどはブクブクうがいが出来るようになるまでつける必要はありません。何もつけなくてもプラークを落とすことが大切です。 生えて間もない歯は 歯としては未完成です。フッ素の含まれた食材(小魚、海草、緑茶など)を取ることで、歯を強化してあげましょう。保健所や医療機関で定期的にフッ素塗布するのもひとつの方法です。
○ 磨いた後にポカリや、ジュースは禁物です。
スポーツドリンクは虫歯菌も元気にします。
無糖のお茶やさ湯にしましょう。哺乳瓶を加えさせたまま寝かしつけるのも広範囲のむし歯(ボトルカリエス)を作りますので厳禁です。
○ 離乳食がとても大切
開始の時期が早過ぎても、遅すぎても問題です。食材の大きさ、硬さにも注意が必要です。最初から硬すぎるのも問題です。乳歯の生え方に応じて食材・調理方法を工夫しましょう
味つけは薄く、甘いものを与えすぎないようにします。離乳期・介助食べの時期にも「おいしいね」と声かけをしながらおいしさを共有しましょう
歯科は、お子さんのむし歯を治療するだけではありません。食べ物を上手に食べること、上手にお話しすること、上手に歯磨きできること、つまり、お口の健康と食べることをとおして、お子さんの健やかな成長を支援していきます。お気軽にかかりつけの歯医者さんに相談してみてください。
つづく
参考HP