智歯(親知らず)は抜いた方がよい?
季節の変わり目になると 親知らずが腫れて我が家に来られる方が、少し増えます。なぜでしょう。
この時期に口の中の細菌が異常繁殖して猛威を振るうからではありません。
口の中の細菌は日ごろからあなたのお口の中にいるのですが、あなたの体力やスタミナが低下して感染抵抗力(免疫力)が落ちた時に「親知らず」が腫れやすいのです。
口の中は日ごろからバイキンが感染しやすい場所ですので、体は免疫による防衛線をはって、細菌と戦っています。免疫力が低下すると細菌は防衛線を突破して体内に進入してきます。
プラークコントロールの難しい、完全に生えていない親知らずの周囲は、細菌にとって恰好の体内への進入経路なのです。
親知らずが腫れると、痛い、あつぼったい、お口が開きにくい、食事がとりにくいと本当に辛いものです。
歯はなるべく抜かないほうがよいとも言いますが、患者さんからよく「親知らずは抜いた方がよいのでしょうか。?」という質問をされます。
“親知らず”は、第三大臼歯の俗称で、智歯とも呼ばれて、上下左右で合計四本あり、全ての歯の中でも一番遅く、17歳から30歳ごろの間に生えてきます。
しかし、「親知らず」がもともと無い人、埋まったまま生えてこない人も少なくありません。親知らず周囲の歯肉(歯ぐき)が感染により炎症を起こした状態を智歯周囲炎といいます。
以下はあくまでも住人の個人的な考えであって、歯医者さんによって考えは異なるかもしれません。あなたのお口の中の状況によっても変わります。参考程度にとどめておいていただき、かかりつけの歯医者さんとよく相談して判断してください。
1.ぬかなくてよい「親知らず」
以下の条件を全て満たしていれば、抜かないほうがよいと思います。
正常にはえていて、対合歯(反対側の親知らず)とうまくかみ合っている
智歯周囲炎にならない
親知らずの一番奥までしっかりブラッシングできている。
2.どちらでもよい「親知らず」
上記の条件を満たしていないが、今のところ周囲の歯に悪影響を及ぼしておらず、しかも腫れたりしていない歯。
3.抜いた方がよい「親知らず」
他の歯に悪影響を及ぼしている歯
親知らずが原因で手前の歯の根っこの部分がむし歯になりやすい場合
(下図の真ん中や右の図参照)
かみ合っている反対側の歯に強く当たっている場合
(特に下の親知らずが上の第2第臼歯に)
など、他の歯の寿命を縮めている親知らずは抜いた方がよいと思います。
たびたび智歯周囲炎で腫れる歯
再三智歯周囲炎で腫れるようでしたら、そのたびに細菌が感染して、体内に侵入しているということですので、抜いたほうがよいと思います。
口の中の細菌が感染すると、心臓などの全身に悪影響があるといわれています。
親知らずとはいえ、親からもらった臓器です。
むやみに抜くことはスジ論として、住人は賛成しません。
親知らずを抜かずにとっておくと将来役に立つ可能性を否定しません。歯を抜いた
他の部位に親知らずを移植することも可能です。
再生療法などの進歩で、将来「親知らず」の細胞が役に立つかもしれません。
しかし、抜かずに残しておいたばかりに他の歯や臓器に悪影響があるのであれば抜いた方がよいのではないでしょうか。
抜くとしても、腫れているなど、炎症がひどい時に抜くのは危険です。まず、お薬やうがい薬で炎症を抑えて、体調を整えてから抜歯してもらいましょう。
抜歯後も注意が必要なので、歯科医の指示に従いましょう。
抜歯するのに様々なリスクや不都合を伴う場合もありますので、まずはかかりつけの歯医者さんに相談してみてください。
難易度の高い抜歯の場合、口腔外科など専門の歯医者さんを紹介してくれる場合もあります。
お口の中を清潔にしておく事、感染抵抗力を低下させないよう、普段からバランスの取れた食事や規則正しい生活を送る事は言うまでもありません。