口の中が、ネバネバ、カラカラ~口腔乾燥症(ドライマウス)~
「口の中がカラカラでひりひりする、義歯が擦れて痛い。」といって来院される方がおられます。
唾液の分泌量の低下で「お口の中がネバネバ気持ち悪い」、
さらに進んで「舌が痛い(舌痛症)、食べ物を飲み込むのが苦痛(嚥下障害)話しにくい(構音障害)重度の口臭やう蝕、歯周病がある」 といった症状があるときは
口腔乾燥症(ドライマウス)の可能性があります。
一般的に唾液の減少が原因ですので、水分を補給して改善する一過性の口渇(のどの渇き)とは異なる状態を言います。
口腔乾燥は高齢者の呼吸器感染症を増加させ,歯周病などを起こしやすい口腔内環境を作ることも明らかになっています。
また、食欲を減退させ全身状態を悪化させる一因となることもあります。
原因は大きく、
○全身的要因
○局所的要因
○精神的要因
に分けられます。
唾液の量が少なくなる原因は様々です。
直接的・間接的なものを含めると、加齢、ストレス、唾液腺障害、食習慣、喫煙、薬物などがあげられます。
また、自己免疫疾患である、
シェーグレン症候群といった病気で、起こることもあります。
非シェーグレン症候群性の口腔乾燥症が92.5%とほとんどです。
65歳以上の高齢者が53.5%をしめています。
中には、 唾液の分泌量は正常範囲内にあるにもかかわらず、口腔乾燥感、ネバネバベタベタ感を訴える患者さんがかなりおられます。
唾液の分泌量が正常ですので、口腔乾燥症ではなく、他の病気を疑ったほうがよいでしょう。
高齢のかたは複数の病気にかかっていて,それぞれお薬が処方されますので,複数のお薬を日々服用されています。
我が家にお見えのなる患者さんも高齢の方はお薬をたくさんおのみになっています。
血圧、心臓、肝臓、コレステロール、血がサラサラする、肩こり、睡眠導入剤、精神安定剤・・・・
例えば、降圧薬,利尿薬,抗不整脈薬,消化管運動促進薬,呼吸器疾患治療薬,向精神薬,泌尿器科疾患治療薬などのお薬が原因で口内乾燥や口渇がおこることがあります。
これらは患者さんにとって、健康を維持するためにお医者さんが出されていますので(必要ないのに投薬されているはずがないので)、お薬をやめるわけにはいきませんが、種類を変更していただくことで改善することもありますので、かかりつけのお医者さんに相談してみてはいかがでしょう。
また,悪性腫瘍の治療として唾液腺の一部を摘出したりや放射線照射を受けた患者さんで、唾液分泌が減少する場合もあります。
治療は人工唾液「サリベート」や保湿剤(オーラルウェット、オーラルバランス)など、対症療法に頼らざるおえないのが現実です。
(サリベートは放射線照射後のドライマウス、塩酸セビメリンはシェーグレン症候群にのみ保険適応で、それ以外の口腔乾燥症には保険がききません。)
漢方薬が効果がある場合があるともいわれています。
また、カンジダ菌や口腔内細菌に対する口腔ケアの有効性も注目されています。
まずはお口の中を清潔にすることが、大切なようです。
参考文献
日本口腔外科学会雑誌、Apr.2009 又賀 泉「ドライマウス 過去から現在」