歯科治療とレーザー治療

  我が家でも従来よりレーザーを用いた治療を行っています。歯周病の外科治療や再生療法やインプラントを行ううえで欠かせない物になりました。昔だったら腫れていた手術等でもほとんど腫れなくなったことや抜糸(縫った糸を取ること)の時期がかなり短縮でき、治療している側が驚くほどです。
 その効能はある程度科学的に証明されています。レーザーは最初はレーザーメスに代表されるように切開などを行うことが主目的で開発されました。研究が進むうちに、鎮痛、消炎、止血、新陳代謝の促進、治癒(傷が治ること)の促進などさまざまな効果がることががわかってきたのです。むし歯で痛んだ歯髄(歯の中の神経)を沈静化させたり、再生療法で再生させたい細胞が増えるような当て方をするとか、いかに歯を抜いた後が腫れないような当て方をするかなどいろいろ方法はあるのですが、ここでは難しいことは省きます。
皆さんに理解していただきたいのはレーザーは有効であるけれども、魔法の装置ではないことです。

 中にはレーザーを照射さえすれば歯周病が治るように誤解している方もいらっしゃるようです。歯周病は、従来どおりきちっと、お口の中の汚れを取り除き、治療することが必須条件です。歯石もとらずにレーザーを当てても根本的な原因解決にはなりません。基本的な歯周治療を行ったうえで、さらにレーザーを照射すれば効果は期待でき、結果的にそのほうが近道なのです。

 使い方しだいで、患者さんにとって福音のはずのレーザー治療ですが、残念なことに、このような使い方は健康保険では認められていないのです。

 今年度より健康保険で一部レーザーによる虫歯治療が認められるようになりました。麻酔をしないで、レーザーでむし歯を治療した場合に認められているのですが、(レーザー装置の種類やさまざまな条件によって異なりますので詳しくは各歯科医院でおたずねください)、今後レーザーで虫歯治療を行うことを宣伝する歯科医院が増えると思われます。
 住人もむし歯の治療にレーザーを用いることがありますが、それは従来の治療に加えてレーザー治療を行うのであって、麻酔をしないで、削らないで、レーザー治療単独では行っておりません。なぜ今回のようなレーザーによる虫歯の治療が保険適応になったかはなはだ疑問です。住人の目には唐突に映ります。(ほかにもっと歯科治療で財源を当てるべきとこがありそうなのに・・・)きっと裏になにか政治的な「からくり」があるのでしょう。なぜなら、住人はもし自分がむし歯になったときに、今回認められたようなレーザーによる虫歯治療を受けようとは思いませんし、住人と同じように考えている歯科医は多いと思います。

 どうせならさまざまな使用法において、健康保険が適応されることを願ってやみません。今回のようなレーザーの使われ方で、かえって患者さんに迷惑がかかるのではないかと心配します。そして、そのことによってレーザー治療そのものがよくないもののように否定されるのではないかと危惧します。

レーザー治療は今後進歩が期待できる優れた治療法であることは間違いなさそうです。
今日の格言「レーザーと刃物は使いよう」

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渥美和彦、荒瀬誠冶、大城俊夫、中島龍夫 編、皮膚科・形成外科医のためのレーザー治療

 

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