保険診療と(自費)自由診療
住人は(怪しい民間療法は別として)厚生省から認可を受けた医療機関が行う医療はすべて保険給付(健康保険ですべて受けられる)されるべきであると考えます。生まれるところから臨終を迎えるまでの間、医療にかかる費用に関して心配しなくてよい社会が理想であると思います。 歯科医院に行ったときに記入する問診表で、保険でするか、自費でするか尋ねられて、記入に苦慮した経験のある方がいらっしゃると思います。なんか、歯科医の金儲け主義が出ているみたいでいやらしく、しかも保険希望と書いたら足元を見られるのではと危惧されるかたもいらっしゃると思います。(実は我が家でも、尋ねるほうの住人も遠慮がちに聞いているのですが・・・)
医は仁術といいますが、赤ひげは何もかすみを食っていたわけではなく、金持ちから高い料金を巻き上げて、そのお金で診療所を運営し、貧しいヒトに医療を施すことで、人々から感謝されていたのです。
ひと昔まえまでは歯科医療でもこの赤ひげに近いことをなさっている先生は結構いたと思います。現在ではサービスを受けた人がそれに見合った料金を払うことが経済の原則ですので(高速道路料金やガソリン税の問題につながりますが・・・)、自費診療の料金も自由競争、適正価格の中で決められており、お金持ちの自由診療で得た収益で病院を運営するなんてことは無理です。この流れでは保険診療はその給付に見合ったレベルのサービスの提供にならざるを得ません。 >>>歯科治療と価格へ
本来、医療とは患者さんが治療のメリット、デメリットを説明してもらった上で、現時点での最高レベルの治療法も含めた治療法の中から自由に選択されるべきで、当然保険診療の場合もそうあるべきだと思います。
ところが今までの保険診療は材料、治療法、治療回数など、お上ががんじがらめに制限し、しかも最低限の医療レベルの給付を認めたにすぎず、高いレベルの治療は認められておりません。
たとえば、よく効く抗がん剤であってもそれが保険適応外の薬であれば、その薬を使った瞬間からそれ以降の入院費用を含めすべての診療費用がすべてが自費になってしまいます。
別に最先端の話でなくても、いわゆる普通の歯科治療というのも、高いレベルどころか、30~40年前の最低限のレベルのものが現在も維持されているのです。それをお役人は良質な医療は保険で可能と主張しているのです。
一例をお示ししましょう。当然のことではあるのですが、歯科医院では治療する器具やうがいするコップ、スタッフの手袋など、患者さんから患者さんへの感染を防ぐ努力はかなりなされています。患者さんを感染から守るこのような対策にかかるコストは当然保険で医院へ支給されているとお考えだと思います。ところがこれらのコストは歯科医院がボランティアで手出ししているのであり、厚生省はなんら手当てをしてくれていないのです。つまり、一方で感染対策などレベルを上げることを求めながら、他方で歯科への保険給付割合は年々削減しているのです。
話が少し横道にそれましたが、「保険でしますか?」それとも「自費でしますか?」的な問いかけは少なくとも我が家では金儲け主義で言っているのでなく、患者さんと十分にコミュニケーションをとって、出来だけ行き違いがないように、ニーズに的確に答えて、自分の引き出しの中にある多くの治療法からその患者さんに最適なものを提供するためにたずねているのです。
幅広い治療オプションを持っている歯科医師ほど、「保険でしますか?」それとも「自費でしますか?」的な問いかけを患者さんにします。自費を勧める歯科医がすべて良心的とは言いません。究極はあなたの歯科医を見る目が試されます。まずは保険と自費の違いをあなたに判りやすく説明してくれる歯科医を選びましょう。自費診療をしっかりやっている歯科医の多くは保険診療だからといって手を抜くことはありません。保険の範囲で最高のパフォーマンスを演じてくれると思います。保険が希望であれば、なんら気兼ねなく、そうおっしゃって下さい。
まとめると、各個人に応じたカスタムメイドの医療が叫ばれておりますが、日本の保険診療は患者さんにとっても少なからず制約のある不自由な医療であり、ほんとに患者さん本位の患者さんが自由に選択できる診療を行おうとすれば、現時点では自費診療になるということです。
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