インプラント

 インプラントという言葉は近年一般的になっており、多くの方がご存知だと思います。住人も開業前より30年以上インプラントに取り組んできました。ではインプラントは今までの歯科の治療法とどう違うのでしょう。
インプラント治療にもメリットとデメリットがあります。 >>>インプラントとは

 インプラントは歯を失ったときにその失った歯の機能を回復するための治療法です。
今まではどうしていたかというと歯を失うと 「ブリッジ」や「入れ歯」で、歯のない部分を補っていました。
このことを「サッカーのゲーム」にたとえてみましょう。
最初11人で対戦していましたが、ゲーム中に「レッドカード」で、二人が退場になりました。それでもがんばって9人がゲームを続行します。でも残された9人は以前より確実に負担が増えて疲労してしまいます。これでは時間が経過するほど、チーム全体が厳しい状況に追いこまれます。
この状態が今までの「ブリッジ」や「入れ歯」です。
つまり今までは歯を抜くと、間違いなく残った歯は負担が増え、確実に歯の寿命が縮まる治療法しかなかったのです。そしてその繰り返しによって徐々に残っている歯の本数が減ってゆき、ますます残っている歯の条件が悪化して、やがて総義歯へとなっていました。
 一方「インプラント」は
選手交代にたとえることができます。
疲労して動けなくなった選手に代わって「いきのいい選手」を入れると、残っている選手の負担は増えないどころか場合によっては軽減されるかもしれません。
同様に、歯を抜いたところにインプラントを埋入することで、他のご自分の歯の延命効果が期待できるのがインプラント治療の最大の利点です。
場合によっては重度のトラブルに見舞われている歯を無理して残すよりも抜歯してインプラントにしたほうが全体的には歯が長持ちするかもしれません。

そこで、歯科医にとっても患者さんにとってもやや哲学的な問題が生じます。「じゃあ、少々悪い歯は全部抜いてインプラントにすればいいじゃん・・・」という考え方がでてくるからです。
歯科医の中にも安易に患者さんの歯を抜歯してインプラントを勧める歯科医もいるのです。そして時間をかけて、難しい治療をしてご自分の歯を残こすよりも、さっさと悪いものは抜いてインプラントを希望される患者さんもいるかも知れません。
 これは価値観の問題ですが、住人は「インプラントはあくまでも人工臓器であり、天然の患者さんの歯を残すことにこだわりたい。そしてどうしてもだめならインプラント」というスタンスを取っています。なぜなら、「悪いものはさっさと切って新しいものに乗り換える」という考えはどうしても住人の考えになじみません。患者さんが望めば別ですが・・・
住人自身は費用や外科処置の問題がクリアーできればとてもよい治療法だと考えます。もし自分が歯を抜いたとしたらその後はインプラントにすると思います。しかし、入れ歯やブリッジでよいとお考えの患者さんに無理してまでお勧めはしません。くれぐれも理解しておいて欲しいのは医療に成功率100%という方法はありません。それぞれの治療法のメリットとデメリットを理解したうえで、インフォームド・チョイスしてください。

つづく
 

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 インプラントについて大まかにお話しました。
 それではあなたが通っている先生からインプラントを勧められたらどう判断したらよいでしょう。
費用に関しての詳細は 「歯科治療と価格」を御参照ください。
 総治療費と保証年限を提示してもらい、総治療費÷保証年限で、1年あたりの治療費を計算してみてください。
1年当たり歯につぎ込む投資額としてあなたの価値観(1年間に購入する、ブランド品の値段やレストランでの食事代、旅行の費用etc.)で検討してみてください。通常メインテナンスをしていてそんなに簡単に悪くなるものではありません。ですから、その額がOKなら経済的問題はクリアーです。

その際、その他の部分を治療する必要がでてくる可能性があるかどうか確認しておかないと、「右下のインプラントしたあとに すぐに左下にインプラントが必要になったけど、もう予算がない」ということになると不幸です。
また、抜歯やインプラント以外に方法がないか確認することも重要です。例えば 歯内治療(根っこの治療)をすれば残せる場合や 矯正的挺出(歯を矯正)して助ける方法や 歯の移植など考えられます。
 次に、インプラントをお考えということは あなたが もともとむし歯や歯周病にかかり安いリスクを持った方で、定期的に歯科医院で管理してもらうことなく、場合によっては不適切な治療を繰り返し受けてきたのかもしれません。そのような患者さんの場合ご自分の自己管理や歯医者さんとの付き合い方を根本から変えたほうがよいでしょう。
 当然のことですが、今までその場しのぎの治療を繰り返し受けてきた歯科医院で、インプラントを勧められたときに、軽い気持ちでその場しのぎのインプラント治療を受けるべきではありません。普段から、あなた自身の歯を大切にしてくれる歯科医院、むし歯予防に熱心で、歯周病のメインテナンスをしっかりしてくれる歯科医師が勧めるのであれば耳を傾けてみてはいかがでしょうか。
 歯は老化によって減っていくものではありませんが、人間の平均寿命が80歳を越えた現在、歯の平均寿命のほうが短くなっています。つまり昔のヒトと同じ口腔管理(歯磨きや歯の定期的なメインテナンス)をやっていたのでは、短命だった昔のヒトより現代人のほうが長期間、歯で苦労しないといけないのです。レッドカードを出されて、抜歯になって高度な治療に高額な費用と時間をかけるよりも抜歯にならないようにするほうが賢明です。
 そうならないためにはご自分の歯の手入れにすこし時間とコストをかけてはいかがでしょうか。  最近、「XXXインプラントセンター」などと、インプラント専門のような標榜で派手な宣伝をしているところがありますが、そこでインプラント治療だけしてもらうというのは注意が必要です。長くお付き合いできる歯医者さんがお勧めです。
インプラントはよい治療法ですので、その信用をおとしめるような治療をして欲しくないのですが、そのような治療があるのも事実です。甘い言葉には御用心。

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