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血糖値も下げる!?命を守る口内フローラ改善術

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あしたが変わるトリセツショー NHK 初回放送日:2025年1月23日 「口内フローラ」のトリセツ 公開:2025年1月23日(木)午後7:27 NHK 糖尿病・認知症・動脈硬化との意外な関係!全身の健康を左右する「口内フローラ」を大特集▼健康寿命が延び食事もおいしくなる!?お口ケアで健康を手に入れる3か条大公開 近年、さまざまな全身の病気が、口の菌と関わっていることが世界各国の研究で明らかになってきています。 糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、一部のがん、認知症など、30以上の病気で口の細菌との関わりが見つかっています。特に関連度が高いと注目されているのが糖尿病です。 今回取材した、糖尿病と診断された患者さんも重度の歯周病にかかっていました。糖尿病の診療ガイドラインには、2型糖尿病において歯周病を治療することが血糖値を改善するのに有効であることが掲載されています。 https://www.nhk.jp/p/torisetsu-show/ts/J6MX7VP885/blog/bl/pnR8azdZNB/bp/pZ6xm20Ewy/

「オトナ歯みがき」のトリセツ

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あしたが変わるトリセツショー 公開:2023年9月14日(木)午後7:52 NHK 【トリセツ01 「オトナ歯みがき」 は適切な力でやさしく磨く】 ■60%以上が陥る歯みがきの誤解! 歯垢(しこう)を落とすために力をいれて歯を磨いていませんか? 実はコレ間違い。歯科衛生士らが推奨する磨く力は150g~200gというやさしい力加減。企業が行った調査によると60%以上が強すぎる歯みがきになっているというデータも。 https://www.nhk.jp/p/torisetsu-show/ts/J6MX7VP885/blog/bl/pnR8azdZNB/bp/pjRey4omA8 /

歯の話の目次

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現在の歯科医学、医療について考えていただき、歯科医と患者さんの関係がよりよくなることを多くの歯科医は願っています。 多くの皆様に歯の健康に関心を持っていただいて、当サイトにアクセスしていただけることは大変嬉しく思います。 本来医療という職業はみなさんが健康になって、その結果衰退してゆくべき業種です。   今後も歯科の治療法、医療の抱える問題などひっそりとではありますが正直に、独断と偏見を抱えて書いていきたいと思います。 患者さんと歯科医の信頼の架け橋がより強固にならんことを願ってやみません。興味のあるキーワードをつまんでいただければ幸いです。 目次 日本人はこうして歯を失っていく 新しい門出の季節に~笑顔で変わるあなたの第一印象~ 残りの人生をおいしく食べるために 口臭(こうしゅう)の原因の90%は口の中 口腔ケアでがん治療はグッと楽になる  歯科治療とレーザー治療 歯科治療のX線(レントゲン)撮影の重要性 保険診療と(自費)自由診療 ゴールド Vsセラミック 歯の治療の材料は何が一番よい? 歯を白くしたい 歯並びと矯正治療 インプラント 歯科医の使命とインプラント 歯周病と体の病気との関係 セルフケアとプロフェッショナルケアでしっかり予防 お勧めの歯磨き剤は? 「歯ブラシの二刀流」のお勧め 夢の再生療法 定期健診(メインテナンス、SPT(Supportive Periodontal Therapy))ってなに? 口腔ケアでがん治療はグッと楽になる 入れ歯が合わないってそもそもどういうこと?(痛い編) 小さい(動く、あっていない)入れ歯は歯ぐきをますます痛めます。 入れ歯が合わないってそもそもどういうこと?(気持ち悪い編) 入れ歯が合わないってそもそもどういうこと?(入れ歯の問題点編) 磁石式(マグネット式)の入れ歯 総入れ歯について 本当は怖い! ...

金属アレルギーについて

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自己免疫疾患やアレルギー疾患が増えています。 ハウスダストやアレルギーの原因物質が増えているのでしょうし、昔と比べて人間側の体質が変化したともいえるでしょう。 免疫というのは自分(自己)と他人(非自己)を区別して、体内に非自己が侵入したらそれを排除、無毒化するシステムです。  自己免疫疾患は自分の体を 免疫 非自己と誤って認識して、やっつけようとして、体を破壊してしまう病気です。 アレルギーは非自己に対して過敏に、あるいは過剰に反応してしまい、これまた不具合が生じる病気です。  免疫が非自己と認識するのはある程度の大きさ(分子量)の物質であり、通常金属や金属イオンは小さすぎて非自己として認識しません。 しかしながら、汗や体内のたんぱく質と金属イオンが結合すると非自己として認識するのに十分な大きさになります。 歯科治療を行ううえで、金属は重要な役割を占めています。 口の中は非常に過酷な環境であるため、多くの金属は微量の成分が溶け出します。 この金属に過敏に反応すると金属アレルギーが起こります。   金属アレルギーはピアスやアクセサリーや腕時計などでも起こります。 金属アレルギーかどうかを確かめるには総合病院などで、 パッチテストをしてもらいましょう。  歯科用金属が原因だと判明すれば、その金属をお口の中からすべて取り除かなくてはなりません。 金属は土台(メタルコア)にも用いられていますので、それらの金属を全て金属以外のマテリアルに変えないといけません。 保険が適応されない場合もあるので、全ての歯を治療するとなると高額になることがあります。 金属アレルギーの原因となる金属は歯科だけでなく、生活環境からも生体に取り込まれているのです。 これらのことを含め,日常生活で注意すべき事項などについて,皮膚科など関連診療科の先生と歯科医ともよくご相談頂いた上、納得した上で治療を受けることをお勧めします。 >>> 金属アレルギー >>> 掌蹠膿疱症 なぜ皮膚はかゆくなるのか 菊池 新(著) PHP研究所 (2014/10/16) なぜ皮膚はかゆくなるのか (PHP新書) 作者: 菊池 新 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2014/10/16 メディア: 新書  

認知症につながる歯周病

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Q.  「歯周病を放置していると、認知症が進行する」と歯医者さんで聞ききました。本当ですか? A.   はい、その通りです。認知症の高齢者は年々増加し、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれています。 認知症にはいくつか種類があり、その多くは脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。 歯周病は50歳代以上の約80%がかかっている疾患です。一般的に、歯周病というと、口の中の病気と捉えられがちですが、最近の研究では認知症とも関わっていることが分かってきています。 歯周病にかかっていると、口の中の菌が歯ぐきから血管内に侵入し、脳まで流れ着いて、小さな脳出血を引き起こします。その結果、神経細胞がダメージを受けて脳血管性認知症を引き起こすと言われています。 さらに、歯周病がある方は口の中で慢性的な炎症が起こっています。それを放置しておくと、今度は全身に炎症が広がっています。 アルツハイマー型認知症は脳の炎症でなので、歯周病の影響で炎症が増強され、進行してしまいます。 また、成人で歯を失う原因のうち、最も多いのが歯周病ですが、歯が抜けている本数が多い方ほど認知症を発症しやすいことも分かっています。 他にも、歯周病と認知症の関係は、様々な研究結果から明らかになってきています。毎日の正確なブラッシングと、定期的な歯科医院での健診によって、認知症のリスクを減らしていきましょう。 くわしくは >>>> 京都府歯科医師会 人生が変わる歯の磨きかた: あなたの歯磨き習慣問題ありかも… (KAWADE夢文庫) 作者: 健二, 松下 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2020/09/14 メディア: 文庫 日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える歯周病の怖さと正しい治し方 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2016/06/30 メディア: Kindle版 続・日本人はこうして歯を失っていく 専門医が教える全身の健康につながる歯周病予防 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2020/05/20 メディア: 新書

睡眠時無呼吸症候群と歯科

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 次のような症状はありませんか  ○大きなイビキをかく  ○日中いつも眠い  ○居眠り運転をよく起こしそうになる  ○夜間の呼吸停止  ○夜中に何度も目が覚める  ○起床時の頭痛やだるさ  このような症状のある方は睡眠時無呼吸症候群が疑われます。 睡眠時無呼吸症候群とは睡眠中に何度も呼吸が止まり、ぐっすり眠ることが出来ない病気です。 激しいいびきの後に呼吸が止まることを、家族や友人によって指摘されてわかることがが多いようです。 鶴見大学歯学部内科学講座教授 子島潤教授によると   日本では睡眠時無呼吸症候群の患者が約200万人いるとされるが、見過ごされているケースが多い。また、日本人は欧米人に比べて原因の一つとされる肥満は少ないが、発症しやすい頭や首の形態をしているので注意が必要だ。  無呼吸になる原因の多くが、舌の根もと(舌根)が気道に落ち込んだり、扁桃腺肥大で気道が閉塞する「閉塞型」である。呼吸中枢機能の低下で起こる「中枢型」は少ないとされている。  閉塞型の治療法は、気道の閉塞を防ぐ「鼻CPAP(シーパップ)」という装置の利用が基本である。しかし軽症の人は、マウスピースの一種である「口腔内装置(スリープスプリント)」の使用で、閉塞を防ぐことができる。  睡眠時無呼吸症候群と診断されるのは、呼吸が10秒以上止まる「無呼吸」が、一晩(7時問)に30回以上あるいは1時問当たり5回以上ある場合だ。その中で、軽症は、無呼吸と低呼吸が1時間当たり5~15回発生するレベルをいう。  睡眠時無呼吸症候群が問題をのは、ただ単に呼吸が止まる、眠りが浅くなって昼問眠くなる、といった点だけではない。重大をことは、放っておくと、明らかに死亡率が高くなることだ。 「呼吸が止まって死ぬというのではないんです。睡眠時無呼吸症候群を放置しておくと、脳血管障害や心臓血管障害をどの発作を起こして命を落とす人が増えるということが、いま問題になっています。たびたび呼吸が止まって酸素濃度が下がることで、体の中にいろいろな影響が及んでいきます。それが原因となって動脈硬化が進むために、巡り巡って命を落とすということです」(子島潤教授) ということだそうです。  睡眠時無呼吸症候群の患者が高血圧や心筋梗塞、脳卒中などを合併するリスクは2~7倍も高いとされているそうです。  しかし、治療方法も確立されてお...

副鼻腔炎と歯の関係

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 副鼻腔炎とは鼻腔(鼻の内部の空間)につながる副鼻腔という空間に炎症が起こる病気です。副鼻腔というのは耳鼻科の領域で副鼻腔炎も耳鼻科の縄張りです。副鼻腔炎は「蓄膿症(ちくのうしょう)」とも呼ばれます。 副鼻腔炎はかなり強い痛みを伴います。いくつかある副鼻腔のうち上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれるのものは、上の奥歯の根とも近接しているため、その痛みを歯の痛みと勘違いされて歯科に来院される患者さんがいらっしゃいます。 上顎(上のあごの)の真ん中から2番目3番目あたりの痛みを訴えられたり、どこか判らないがとにかく上の歯が痛いと訴えられる患者さんがいらっしゃいます。 その部分に明らかに治療の必要なむし歯などがあれば、治療を開始してもよいのですが、痛みそうな虫歯がなかったり、あるいは軽度のむし歯に対して治療したのに痛みが軽減しない場合は副鼻腔炎も疑ってみる必要があります。  我が家でも虫歯がないのに強い痛みを訴えられた患者さんや治療しても痛みが軽減しない患者さんに耳鼻科の受診を勧めたら上顎洞炎などの副鼻腔炎だったことが結構あります。  患者さんにしてみれば、痛みが激烈であればあるほどややパニック的に「説明はいいから、なんとかこの痛みを取り除いてほしい」と強く思われるようです。けれども「痛み」は主観的なものであり、個人差があり、どの場所がどの程度痛いかを数値化するのはなかなか難しいのです。歯が痛んでいるのか、副鼻腔が痛んでいるのかは なかなか判りにくいようです。ここでもいつも申し上げるように医療に100%はありません。  レントゲンを撮っても「むし歯になってない」あるいは「歯の根っこが化膿していない」ような歯でも患者さんが歯の痛みと思い込んでしまい、ズバリ「この歯が痛い」と訴えられると、歯科医としては(特に優しい歯科医は)患者さんの訴える歯を治療することがあるようです。けれども治療しても痛みが取れない場合はさらに踏み込んだ歯科治療を行う前に耳鼻科などを受診してみてください。 耳鼻科を受診して何も問題ないと言われれば、その時改めて歯の治療に取り掛かってもあまり手遅れになることはないと思います。「歯が化膿しているという診断」のもと抗生物質を飲んだら、タマタマ副鼻腔炎のほうにも効いて症状が軽快することもあります。このような場合本来の原因である副鼻腔炎に気づかないままに...

口の中が、ネバネバ、カラカラ~口腔乾燥症(ドライマウス)~

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 「口の中がカラカラでひりひりする、義歯が擦れて痛い。」といって来院される方がおられます。 唾液の分泌量の低下で「お口の中がネバネバ気持ち悪い」、  さらに進んで「舌が痛い(舌痛症)、食べ物を飲み込むのが苦痛(嚥下障害)話しにくい(構音障害)重度の口臭やう蝕、歯周病がある」 といった症状があるときは 口腔乾燥症 (ドライマウス)の可能性があります。  一般的に唾液の減少が原因ですので、水分を補給して改善する一過性の口渇(のどの渇き)とは異なる状態を言います。  口腔乾燥は高齢者の呼吸器感染症を増加させ,歯周病などを起こしやすい口腔内環境を作ることも明らかになっています。 また、食欲を減退させ全身状態を悪化させる一因となることもあります。 原因は大きく、  ○全身的要因  ○局所的要因  ○精神的要因 に分けられます。 唾液の量が少なくなる原因は様々です。 直接的・間接的なものを含めると、加齢、ストレス、唾液腺障害、食習慣、喫煙、薬物などがあげられます。 また、自己免疫疾患である、 シェーグレン症候群 といった病気で、起こることもあります。 非シェーグレン症候群性の口腔乾燥症が92.5%とほとんどです。 65歳以上の高齢者が53.5%をしめています。 中には、 唾液の分泌量は正常範囲内にあるにもかかわらず、口腔乾燥感、ネバネバベタベタ感を訴える患者さんがかなりおられます。 唾液の分泌量が正常ですので、口腔乾燥症ではなく、他の病気を疑ったほうがよいでしょう。  高齢のかたは複数の病気にかかっていて,それぞれお薬が処方されますので,複数のお薬を日々服用されています。 我が家にお見えのなる患者さんも高齢の方はお薬をたくさんおのみになっています。 血圧、心臓、肝臓、コレステロール、血がサラサラする、肩こり、睡眠導入剤、精神安定剤・・・・ 例えば、降圧薬,利尿薬,抗不整脈薬,消化管運動促進薬,呼吸器疾患治療薬,向精神薬,泌尿器科疾患治療薬などのお薬が原因で口内乾燥や口渇がおこることがあります。  これらは患者さんにとって、健康を維持するためにお医者さんが出されていますので(必要ないのに投薬されているはずがないので)、お薬をやめるわけにはいきませんが、種類を変更していただくことで改善することもありますので、かかりつけのお医者さんに相談してみてはいかがでしょう。 また,...

がん治療と口腔(こうくう)ケア

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我が家にお見えの患者さんにも、初めてお見えになったときにすでにガンの手術をなさったことのある方や、久しぶりにお見えになって、前回の治療以降に、ガンの手術を受けた方などいらっしゃいます。 皆さん、「全身の治療と歯の治療は関係ないだろう 」「たかが歯の治療なので、大丈夫だろう」と考えられておられるのか、全身の病気のことはあまり話していただけないことがあります。 しかし、実はそうでもないのです。  がんの治療は、がんそのものに対する作用だけでなく歯や歯肉を含め全身に影響を与える可能性があります1)。 がん治療による歯や歯肉への副作用には、歯肉を含めた口腔粘膜の腫れ、ただれ、潰瘍形成(口内炎)、感染、味覚の変化、口の渇き、痛み、むしば、歯がぐらぐらする、歯肉の萎縮の他、あごの骨への影響などがあります。 このため、がんの治療を受けている患者さんにとって、正しい口腔ケアの習慣を身につけることはとても重要です。 また、口腔内を健康につためには、がん治療の主治医(以下、主治医)、かかりつけの歯科医(以下、歯科医)、そして患者さんの三者が良好なコミュニケーションを築くことが大切です。 歯科医には、あなたががん治療を受けていることを、また主治医には、あなたの歯科治療歴を把握しておいてもらう必要があります。       がんの治療を始める前に ○歯科検診とデンタルクリーニング(歯面清掃)を受けましょう。  また、がん治療中も定期的に歯科の検診を受けましょう。 ○抜歯や歯科インプラント埋め込みなどの歯科処置を行う場合は、事前に主治医とも話し合いましょう。 ○入れ歯を使用している場合には歯科医の検診を受け、調整してもらいましょう。 ○歯肉からの出血、歯や歯肉の痛みや違和感など、口腔内に異常がある場合には歯科医と共に主治医にも伝えてください。  がん患者さんもがんにかかつていない人も、日常の口腔ケアが大切であることに違いはありませんが、がん治療が歯や歯肉に影響を及ぼす可能性があるため、口腔ケアはがん患者さんにとって特に重要です1)。  いつもの口腔ケアで実践すること ○毎食後と就寝前にやわらかい歯ブラシで歯と舌のブラッシングを行います。  歯ブラシには力を入れずに磨きましょう。 ○一日に一度はデンタルフロスを使用し、ていねいに歯垢(しこう)を取り除きましょう(歯肉からの出血や痛みがある場...

悲しい感謝の言葉

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 先日のことです。ある患者さんのその日の治療が終わって、挨拶が終わり、患者さんが治療台を立った時です。 「そうです。先生、○○というのがお世話になっていたと思います。実は私の義父なのですが、数日前に亡くなりまして・・・」 「えーーー、亡くなった?」 ○○さんの奥さんは以前から我が家の患者さんだったのですが、その御主人である○○さんが我が家にこられた時は すでにあまりよろしくない病気にかかっていることはうかがっていました。 精神的にお強いのか、明るい表情で、奥様と一緒にこられて、自家製の野菜を下さったり、とてもお元気そうでした。最後に我が家に来られてまだ3ヶ月しかたってないのに・・・言葉を失いました。 お悔やみの言葉もかけられずに呆然としている住人に向かって「「最後まで、おいしく食事ができて感謝していたので、先生に今日会うのなら、くれぐれもよろしく伝えてください」と義母から言われました。ほんとにありがとうございます。」 たいしたお役には立ててないはずです。こちらとしては予想外の言葉にまた言葉を失って、お悔やみの言葉を噛んでしまいました。 住人には身に余る言葉をいただきました。我が家で治療したことを喜んでくれていたことを聞くと「微力ながらも少しは人様の役にたてたのかな」と思うのですが、それにしても患者さんの訃報に接するのはいたたまれなく、本当に悲しいです。 多くは話せませんでしたが、多くを教えていただきました。住人などまだまだ人生一生修行です。いま、いろいろ講釈たれても薄っぺらいだけになってしまうので本日はよしときます。 ただただ ご冥福をお祈りいたします。合掌 宮崎 都井岬

舌がピリピリ、ヒリヒリ ~舌痛症~

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以下はフィクションであり物語です 。 あるところに中年の女性がいました。 どちらかといえば生真面目な女性は最近何となくストレスがたまっています。 ある朝、 舌の先端や縁がヒリヒリするのが気になって、洗面所の前で舌をベーと出して覗き込みました。 今まで自分の舌なんか気にも留めたことがないし、見たことがなかったのですが、初めてみる舌は何か赤みがかって、ぶつぶつが出来ているし、表面には白い苔のようなものが生えていて、しかも何箇所も切れたように、溝が出来ています。 「何か悪い病気ではないかしら?」 「ガン?」  急に心配になった女性は近くのお医者さんに見てもらったのですが、お医者さんは「あまり心配ないのでは。」と言われ、ビタミン、亜鉛不足と言われて、お薬をくださいました。 それでも、ピリピリ感はあまり変わりません。 そういえば最近、料理の味付けも、味覚が感じにくくなったような気がします。 気になりだすと、なんだか声がうまく出てなくて、上手にしゃべれてないような気がしてきました。 ますます気になる女性は入れ歯があっていないのではないかと思い、今度は歯医者さんに見てもらいました。 骨粗しょう症、不眠症、など日ごろ様々な症状でお悩みの女性は たくさんのお薬を飲んでいたので、その影響からか唾液の量は多少すくなかったのですが、正常の範囲内でした。 歯医者さんは「そんなに鋭利な歯はないのだけれど・・・」と首をかしげながらも奥歯の舌と接する部分を磨いてくれました。 それでも、状況は良くなったり、悪くなったり一定しません。 気になりだしたら、ますますヒリヒリするので、舌の先端を歯に押し付けてみたりすると、ますますヒリヒリします。前歯の裏側や先端のデコボコがますます気になるようになりました。 でも不思議なことに食事の時はそれほどではありません。物事に熱中している時は痛みを忘れています。  「舌がん」ではないかと思い、家庭医学書などで読んで、ますます気になりだし、思い悩むようになりました。 このような症状の患者さんは住人のような一般の診療所のレベルを超えています。 もちろん舌癌を見逃していたら大変です。是非一度大学病院などの口腔外科での診察をおすすめ致します。 北海道大学

智歯(親知らず)は抜いた方がよい?

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 季節の変わり目になると 親知らずが腫れて我が家に来られる方が、少し増えます。なぜでしょう。  この時期に口の中の細菌が異常繁殖して猛威を振るうからではありません。 口の中の細菌は日ごろからあなたのお口の中にいるのですが、あなたの体力やスタミナが低下して感染抵抗力( 免疫力 )が落ちた時に「親知らず」が腫れやすいのです。  口の中は日ごろからバイキンが感染しやすい場所ですので、体は免疫による防衛線をはって、細菌と戦っています。免疫力が低下すると細菌は防衛線を突破して体内に進入してきます。 プラークコントロールの難しい、完全に生えていない親知らずの周囲は、細菌にとって恰好の体内への進入経路なのです。 親知らずが腫れると、痛い、あつぼったい、お口が開きにくい、食事がとりにくいと本当に辛いものです。 歯はなるべく抜かないほうがよいとも言いますが、患者さんからよく「親知らずは抜いた方がよいのでしょうか。?」という質問をされます。     “親知らず”は、第三大臼歯の俗称で、智歯とも呼ばれて、上下左右で合計四本あり、全ての歯の中でも一番遅く、17歳から30歳ごろの間に生えてきます。 しかし、「親知らず」がもともと無い人、埋まったまま生えてこない人も少なくありません。親知らず周囲の歯肉(歯ぐき)が感染により炎症を起こした状態を智歯周囲炎といいます。  以下はあくまでも住人の個人的な考えであって、歯医者さんによって考えは異なるかもしれません。あなたのお口の中の状況によっても変わります。参考程度にとどめておいていただき、かかりつけの歯医者さんとよく相談して判断してください。 1.ぬかなくてよい「親知らず」   以下の条件を全て満たしていれば、抜かないほうがよいと思います。     正常にはえていて、対合歯(反対側の親知らず)とうまくかみ合っている     智歯周囲炎にならない     親知らずの一番奥までしっかりブラッシングできている。 2.どちらでもよい「親知らず」  上記の条件を満たしていないが、今のところ周囲の歯に悪影響を及ぼしておらず、しかも腫れたりしていない歯。 3.抜いた方がよい「親知らず」     他の歯に悪影響を及ぼしている歯      親知らずが原因で手前の歯の根っこの部分がむし歯になりやすい場合      (下図の真ん中や右の図参照)      かみ合...

感謝の気持ち

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 昨年の秋のお彼岸の頃、所用で京都に出かけたときのことです。たまたまワンマンの路線バスに乗っているとガヤガヤと女子高生が乗ってきました。いまどきの女子高生は当地でも京都でも同じです。バスの中でも楽しそうに会話に花を咲かせていました。いくつかのバス停を通り過ぎ、あるバス停でその女子高生のうちの数名が定期を見せながら降りてゆきました。その時、そのいまどきの女子高生たちが運転手さんに「ありがとうございました」と口々に御礼を述べて降りてゆきました。 その口調に京都の雰囲気が入っていたかどうかはもう忘れてしまいましたが、秋の京都の心地よい雰囲気とともに、なんとなくほのぼのとしたうれしい気持ちになりました。「そういえば自分らも誰から教わったか忘れたけれど門司港の桟橋通りで路面電車を降りる時には定期を見せながら「ありがとうございます」って言ってたかな・・・・・」と昔のことをふと思いだしました。  我が家でも小さな患者さんたちが帰り際にペコリと頭を下げて「ありがとうございました。」といって帰ることがよくあります。元気に言う子。はっと思い出したように言う子。保護者の方から「治療が終わったら皆さんにちゃんと御礼を言うのよ!」と言われたであろうことも容易に想像できます。時には保護者の方が子供さんの頭に手をやり、「御礼を言いなさい」てなことがあったります。でもどんな「ありがとうございました」でも、その瞬間、診療室や待合室にいる他の患者さんたちもほのぼのとしたよい雰囲気に包まれます。小さい患者さんだけでなく、患者さんから御礼の言葉やお手紙をいただくと住人やそのスタッフの胸はジーンとして熱いものがこみ上げてきます。  かっこいいことを言うようですが、住人や我が家のスタッフはその瞬間のために仕事をしているようなものです。御礼をいっていただけることを生業(なりわい)としている我が家の者たちはなんと幸せ者でしょう。そしてこの患者さんの感謝の気持ちは技工士さんなどの裏方で我が家をサポートしてくれている皆さんにも伝えないといけないと思っています。  一方、こんな山奥にまでわざわざ来てくださる患者さんに、住人は感謝に堪えません。本当にありがたいことです。 外食のときに「お金を払っているのに何で御礼を言わないといけないの?」と考えている方もいらっしゃるようですが、少し寂しい気がします。 住人はコンビニ...

一口30回噛んでますか

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  皆さん「一口30回噛む」という言葉をご存知ですか。 イギリスで4期に渡り首相を務めたウイリアム・グラッドストン氏 (William Gladstone,1809-1898)が言いだしっぺだそうです。 よくかまないといけないことは幼稚園の時から先生に言われていたことです。 住人は自慢ではありませんが、小学校の時にビン牛乳の一気飲みのタイムを競っていたくらいですから、当然よく噛んでません。 自慢どころか恥ずべきことです。   先日も家族で「ココイチ」でカレーを食べたのですが、500gのライスで、一番早く食べて退屈してたのは住人でした。 西日本新聞に2003年12月から連載されている 食卓の向こう側というのがあります。アマゾンでも売ってますので、一度手にとってみてはいかがでしょう。 その2009/11/22付 西日本新聞朝刊に食卓シリーズ・第13部 命の入り口心の出口<1>喜ぶ献立 早食い招く「軟らか食」というのが掲載されました。 今の子供さんもよく噛まないし、噛まなくても飲み込める軟らかい食材が給食でも好まれるそうです。 よく噛むことは、メタボ予防、がん予防、認知性予防なのど効果もあるそうで、子供だけに大切でなく、むしろ中高年にとって大切になることなのですが、住人のように子供のときに早食いの習慣がつくとなかなか治りません。 皆さんは一口30回噛んでますか。   食卓の向こう側 第13部 (西日本新聞ブックレット No. 25) 作者: 西日本新聞社「食くらし」取材班 出版社/メーカー: 西日本新聞社 発売日: 2010/07/01 メディア: 単行本 北海道 旭山動物園

歯周病って治るの?(ウソでもいいから大丈夫といって。)

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 もしあなたがガンになったとします。 「大丈夫あなたのガンは治りますよ」と言ってくれるA先生と 「5年生存率は50%ですが最善を尽くします。一緒にがんばりましょう」と正直に言うB先生とどちらがいいですか? 本当は治らないのに、ウソをついているんだけど、多くの方はA先生がよいのではないでしょうか。 「もうあなたは手遅れです」なんていわれると、希望も何もなくなり意気消沈してしまいますよね。わらにもすがる気持ちで「何か助かる方法はないだろうか」と考えるのも自然ですし、ご家族にしてみれば、「できるだけのことをしてあげたい」と思うのも納得できます。 こういう話のときに、結果がよければ、つまり、治れば問題になることはありません。 問題になるのは「サルのコシカケ」など 代替医療 などに高額の費用がかかったにもかかわらず結果が思わしくないときなどです。  こういう人の弱みに付け込むようなビジネスが存在するようです。結果が思わしくなくても、「多くの方は、治るという言葉を私が信じたのだからしょうがない・・・」でしょうか。 つまり、「コストや治療にかかる時間とその結果(費用対効果)で納得がいくかどうか」が問題になるのですが、極端なトラブル例が「訴えてやる・・・」ではないでしょうか。 では、糖尿病ではどうでしょう。 「糖尿病が完治する」と言い切るお医者さんは そういないと思います。 患者さんのほうも、糖尿病についての理解が深まり、「これ以上悪くしないように上手に糖尿病と付き合っていこう」と考えられるのではないでしょうか。(まあ糖尿病が治ると言っている健康食品もあるようですが・・・何をもって治ると言うのか、「治る」の定義が問題です。) 歯周病はガンのように命に関わる病気ではありませんが、 >糖尿病や心臓病との関係が科学的に証明されつつあります。 生活習慣病ですからどちらかと言うと糖尿病や高血圧に近いのではないでしょうか。  それでも、患者さんが歯科の門をくぐる時、「歯科医からなんといわれるだろう。悪いと言われるのではないだろうか」という不安と「大丈夫!治りますよ」と言う歯科医の言葉を期待されて来院されると思います。  歯周病が他の生活習慣病と異なるのは、その病気本体(歯周病)だけでなく、失われてしまった歯などの、機能回復、見た目の回復などの治療が必要になることが多いことです...

歯周病治療で肝機能改善

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 飲酒しない人も発症する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)患者が歯周病菌を保有する割合は健康な人の約4倍と高く、歯周病の治療で肝機能が大幅に改善することを22日までに、横浜市立大や大阪大などの研究チームが突き止めた。  研究チームによると、歯周病と心臓病や脳卒中との関連は指摘されているが肝炎では初めて。チーム長の中島淳(なかじま・あつし)横浜市立大教授(消化器内科)は「脂肪肝の人は肝炎に進行させないように、口腔(こうくう)内を衛生に保つことが大切だ」と話している。  NASHは成人男性の3人に1人程度とされる脂肪肝の人のうち、1~2割を占める。進行すると肝硬変や肝臓がんを引き起こし、肥満との関連が指摘されているが、発症メカニズムは解明されていない。  研究チームがNASH患者102人の歯周病菌を調べたところ、保有率は52%で健康な人と比べて約3・9倍だった。また肥満状態のマウスに歯周病菌を投与すると、3カ月後に肝臓が平均約1・5倍に肥大化。肝炎が悪化するなどした。  歯周病のNASH患者10人に歯石を除去したり抗生物質で歯茎の炎症を抑えたりして治療した結果、3カ月後には平均すると肝機能の数値がほぼ正常になった。  研究成果は16日付英医学誌の電子版に掲載された。 ※英医学誌はBMCガストロエンテロロジー 共同通信社2012年 2月23日(木) 配信  学生時代、病棟回診で、口腔外科の教授が、口の中の傷の治りの良さを評して、「常在菌 がうようよいる口や肛門の傷の治りが速いのは、一般の外科医からしてみると、理解できないことだろう」という節のことをおっしゃていたのを思い出しました。 (口はその出来上がる過程(発生)の特殊性から、他の臓器とは異なる免疫や感染防御の特殊性があるのだが、ここでは省きます) 無菌的な環境で手術することを躾けられてきた外科医としては、そもそもその手術の部位が汚染されているというのは理解に苦しむことを評したのだろう と解しています。 ことほど左様にお口の中は細菌に対する防御が発達しており、人間はその恩恵にあずかっています。 つまり、感染にたいする抵抗力の高い人の場合、少々歯磨きしなくても、問題が先鋭化しません。 しかしながら、やはり感染症であり、その事実を甘く見てはならない、ということを一般の医科の方から発信されだしているのですが...

残りの人生をおいしく食べるために

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 患者さんで、「どうせ自分はそんなに長生きせんから・・・」とおっしゃる方がいらっしゃいます。しかし、最近の医療技術はそう易々と死なせてくれません。 脳、心臓血管系の病気でも救命率は高まっています。どこか後遺症は残っても命は助けてもらえます。そして特殊な状態をのぞいて、「食べること」は生きている限りやめるわけにはいきません。そして、歯が残っていればその歯はもちろん、たとえ総入れ歯になっても、お口の手入れはしなければなりません。  近年、医療技術の進歩と相反するかのように「要介護者」も増加傾向にあります。前触れもなく起きる脳梗塞による寝たきりや認知症や老化等による介護問題は、患者さん本人のみならず、ご家族にも大きな負担を強いることになります。健康な時に気がつかなかった”食べる・噛む”ということが、要介護者にどれほどの効果をもたらし、より豊かに生きることにとって重要であるかがわかってきました。認知症とよく噛めるかどうかの関係などは昔から言われています。食事がおいしく、元気になれば、結果的に医療費も安くなります。  我が家でもご高齢の患者さんは全身的な疾患を複数抱えておられる方が少なくありません。例えば、脳梗塞などで「血がサラサラ流れやすいように」お薬を飲まれている方は、歯を抜くだけでも、健康な方より注意が必要になります。 それでも来院していただければ、何とか、ケアーや治療が出来ます。 昔に比べれば訪問診療などのシステムは出来上がりましたが、実際こちらがお宅にうかがっての治療は歯科医院内で行うものと比べると、どうしても限界があるのが現実です。  若いときは仕事や諸事情でなかなか歯医者さんには通えないのが 日本の実情ですが、「お元気なうちにしっかり歯の治療をしておいて、悪くなくても定期的に歯科医院でメインテナンスしておいた方が得策」というのが、住人の感想です。70歳ごろまでに一度きちっと治療することをお勧めします。 皆さん平均すると、還暦以降も20年は食べないといけないのですから・・・・。 年配の患者さんが口々に「年取ってからは、旅行や、旅先でおいしいものを食べることくらいしか楽しみがない」と言われます。我々歯科は歯科医、衛生士、技工士、アシスタントのチームプレイでその生きがいのためにお手伝いが出来ます。 京都 龍安寺

肺炎と歯科

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マイコプラズマやインフルエンザの流行に伴い、肺炎が注目されているようです。 肺炎とお口の中は密接な関係があります。 口腔常在菌といって、常に口腔内(お口の中)にいるそれほど特別でない細菌が心臓疾患、糖尿病、腎臓病など、体のあちこちで悪影響を及ぼすことは、以前から言われており、歯科から見ると決して新しい話ではありません。  肺炎は日本人の死亡原因の第4位で、この肺炎で死亡する人のおよそ90%以上の人が65歳以上の高齢者です。 現在、老人病院では脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)が基礎疾患にあり、肺炎や感染症になってお亡くなりになる方が約半数との調査結果があるそうです。  実は 本人に気が付かないうちに、口の中の細菌が肺の中に入っているのです。口腔内の細菌と肺炎の原因菌とが一致することが多いことは古くから知られた事実です。  のどは気管のほうへ行く空気も 食道へ行く食べ物も通る通り道です。 通常は「嚥下反射」という反射が起こって、食べ物が通る時には気管のほうへの入り口が自動的にふさがって、食べ物が食道のほうへ流れてゆきます。 ところが、老化や、脳血管障害などで、この反射の機能が低下すると、調節がうまく行かず、あやまって、気管のほうに食べ物が行ってしまいます。 肺の中に細菌、胃液、異物等を入れてしまうことを「誤嚥」と呼びます。 そして誤嚥が原因で起こる肺炎を「誤嚥性肺炎」と言います。 この誤嚥性肺炎は高齢の方に多いといわれています。 さらに恐ろしいのは 夜寝ている間にも少しずつ誤嚥しているのです。 誤嚥したことに体が気付いてくれて、むせたりするとまだわかりやすいのですが、気づくことなしに誤嚥をしていることもあります。 ある調査によると健康な人でも約半数は夜間寝ている間に誤嚥を起こしているという報告があります。 健康な方は体力、免疫力がありますので発病しないだけなのです。 口の中が汚れていると様々な細菌が増殖し結果的に、肺炎にかかる確率が高くなり、寿命も縮まることになるのです。  日々お口の中を清潔にしておくことが長寿に直結しているのです。 定期的に歯科医院でクリーニングしてもらうことも効果的です。 北海道 タカトシ牧場

歯科治療とエコロジー

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住人が子どものころは牛乳もビールも瓶でした。母親に連れられて小倉井筒屋に買い物に行ったときなど、地下でビン入りのコーヒー牛乳を買ってもらいゴクゴク飲んで、売り場の熱気で上昇した体温を冷ました記憶があります。今考えると「空き瓶は返して再利用する」というシステムは地球に優しい、かなり優れたリサイクルシステムだったと思います。  さて住人が大学病院に勤務していた時も、門司港で勤務医をしていたころも、コップはメタルのコップ、エプロンは布製でしたが、住人を含めみんなあまり違和感を感じていなかったと思います。「メタルのコップ」といっても「オートクレーブ」という機械で滅菌(完全に細菌を死滅させること)していましたので、理論的には現在の紙コップより清潔だったかもしれません。また、布エプロンもスタッフが毎回洗濯してアイロンをかけていました。今になって思うとコップやエプロンを使い捨てにしてなかったことは感染予防ということではあまり問題なかったのかもしれません。  感染する恐れのある器材の使い捨てに関しては医療人として異論をはさむつもりは毛頭ありません。しかし、急速に使い捨てのエプロンなどが広まった理由は「患者さんが病院に対していだくイメージ」対策としてだったように思えます。例えば「紙コップを使っている病院はすべての点においてクリーンであるだろう」といったイメージを患者さんに持って欲しい医療機関側のイメージアップ作戦だったような気がします。 北海道 旭山動物園

所得と歯の本数  ―平成30年国民健康・栄養調

所得と歯の本数  ―平成30年国民健康・栄養調 平成30年国民健康・栄養調査結果の概要が1月14日、厚労省より公表され、歯の本数が20歯未満の者の割合は、世帯所得が600万円以上の世帯員と比較して、男女ともに200万円未満の世帯員で高いことが分かった。また、自分の歯を20本以上有する者の割合は76.9%と、前回(平成26年)より増加。歯肉に炎症所見がある者の割合は21.3%で、前回より減少した。  今回の調査では、毎年実施している基本項目に加え、所得等社会経済状況と生活習慣等に関する状況を重点項目として、世帯所得別に[1]600万円以上、[2]400万円以上600万円未満、[3]200万円以上400万円未満、[4]200万円未満に分け、生活習慣を分析した。  自分の歯が20歯未満の者(20歳以上)の割合を見ると、男性は世帯所得[1]18.9%、[2]21.3%、[3]24.0%、[4]30.2%、女性は[1]21.6%、[2]16.6%、[3]22.2%、[4]29.8%で、世帯の所得が[1]の世帯員と比較して、男性では[2]~[4]の世帯員で高く、女性では[3]と[4]の世帯員で高かった。  歯・口腔の健康に関する状況について、自分の歯が20歯以上の者(20歳以上)の割合を見ると、全体では76.9%で前回より4.1ポイント増加した。年代別では、70歳以上で45.2%(前回比8.1ポイント増)、60歳代では72.7%(同5.0ポイント増)、50歳代では90.2%(同4.3ポイント増)、40歳代では97.1%(同0.7ポイント増)、30歳代では99.0%(同0.5ポイント増)、20歳代では99.4%(同0.6ポイント減)となっている。  歯肉に炎症所見がある者は、全体では21.3%で前回より1.8ポイント減少した。年代別では、30歳代が27.7%(前回比0.8ポイント減)と最も多く、以下、40歳代が27.5%(同0.3ポイント増)、50歳代が25.1%(同2.2ポイント減)、20歳代が21.1%(同6.0ポイント減)、60歳代が19.3%(同4.7ポイント減)、70歳以上が14.5%(同0.5ポイント増)と続いた。 ・ 平成30年「国民健康・栄養調査」の結果(厚労省HP)

八重歯ってかわいい? ~糸切り歯(犬歯)の重要性~

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  ファーストフードやカレーなどやわらかくて、あまり噛まなくてよい食材が増えている現在、日本人のあごは小さくなっているようです。 一昔前までは、親知らずが生えるスペースがなくて、斜めに生えたり、手前の歯に引っかかって生えてこなくてトラブルになっていましたが、最近では親知らずのひとつ前の歯(第2第臼歯)の生えるスペースすらなくて、正常に生えない方もいらっしゃいます。 あごが小さくなるに伴い、歯の大きさもコンパクトになってくれるとよいのですが、そうはうまく行かないようです。  歯の生えるスペースが足りなくて、歯並びがデコボコになるのが叢生です。 左右の犬歯の間の幅はあごの成長に伴い、永久歯に生え変わる間に、3~4mm広くなるといわれています。(乳歯の時は「すきっ歯」の方がむしろ正常なのです。)この隙間を利用して、しかも乳歯よりも外側に永久歯が並ぶことで、乳歯より大きな永久歯がきれいに並びます。 乳歯の時にあごが小さく、「すきっ歯でない」お子さんは叢生になる可能性が高いと言えます。 犬歯は周囲のよりも遅く生えるので、生えるスペースがないと、外側にはじき出されたようにして生えてきます。 日本では 八重歯 といわれ、昔はアイドルなどでも、『八重歯がカワイイ』といわれた人もいるようですが、八重歯がかわいいのは日本だけのようです。 欧米では「ドラキュラの歯」中国では「トラの歯」といわれ、評判がよくありません。 日本で、「八重歯がかわいい」と言われていた女子も、アメリカに留学すると「あなたはなぜ留学するほどの経済状態なのに、矯正をしないのか?」と聞かれることもあるようです。  アメリカなどは矯正をすることが、ステイタスであり、ご高齢の方でも矯正しますし、わざと目立つ矯正の装置やゴムを入れて、見せびらかすような感があります。 スポーツ選手もビジネスマンも国際派は 「歯と歯並びがキレイ」が重要なのです。 ところで、八重歯の場合、「犬歯が外にはじき出されて見た目は悪いのだから、犬歯を抜けばいいじゃない」と思われませんか?  けれども歯科医は、小臼歯(犬歯の後ろの歯)を抜いてでも、わざわざ犬歯を抜かずに矯正します。 なぜだと思われますか? 実は犬歯 特に上顎(上の)犬歯は歯の中でも非常に重要な役割をしている歯なのです。 そのため犬歯は歯の根が最も長く、丈夫に出来ています。歯ぎしりをして...

患者と歯科医師の信頼関係

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 一昨日の事である。お見えになる患者さんが、口を揃えたように「先生!、今日の朝のNHKの番組ご覧になりました?先生がいつも言われるように、咬み合せって本当に大切なんですね・・・」 来る患者、来る患者である。   住人の説明能力不足と不徳の致すところなのでしょうがないのですが、住人が長いこと説明してきたのに、ナカナカ信用していただけなかったことも、 NHKだと瞬時に信用していただけるのです。 ちょっとへこみます。    さて、 長年我が家とお付き合いくださっている、高齢のご婦人が今年に入ってメインテナンスにお見えにならなくなったので、ちょっと気にかかっていたら、先日アポイントの電話があり、お見えになった。  大腸癌を既に経験されている方であるが、年末のドックで、乳癌が見つかり、今年に入って右の胸を手術して退院してきたばかりだとの事、 義歯の調整をしながらお話をうかがっていると、リンパ節のひとつに転移が見つかったことも(本当の心の奥底までは計り知れないが)たいしたことでないように明るく話される。 「もうこの年になったら、何も怖い物はありません。」と完全に悟りのきわみに達した様子でお話くださった。 でも、 「右胸だとしたら、筋肉の加減などで、歯ブラシするのも大変でないですか」とお尋ねすると 「自分は手術前と変わらず手も上がるし、問題ない」との返事。 それに続いて、 「先生、私ね、お見舞いに来てくださった方からも言われるんだけど、いい先生に巡りあったのよ。大腸の方は大丈夫だけど、一応他も検査しておいたほうがいいと前の主治医の先生から言われて、言われるままにその日のうちにドックの予約して検査受けたの。そしたらね、しこりが見つかったのよ。 年末はちょっと忙しかったので、年明けてからの手術を受けたんだけど、今度の先生もとってもいい先生でね・・・。(どうやらイケメンらしい)」 続けて、 「私、今までいろいろな科にかかってきたけど、ほんとうに先生にだけは恵まれてきたのよ。歯科も含めて(これはたぶん社交辞令)・・・・」とおっしゃった。 彼女はべつに名医を探し求めてはいないのですが、自他共に医師に恵まれたと思って満足している様子。    乳癌の治療で用いられるお薬の中には注意を要するお薬もあることをお 伝えし、そのことの書いてあるパンフレットをお渡しして、また、定期的にメインテナン...

かかりつけの衛生士をもっていますか?

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 あなたのお口の中の状態を熟知した、かかりつけの衛生士さんをお持ちですか? かかりつけの歯科医ではありません。歯科衛生士です。 歯科衛生士は、歯科疾患の予防及び口腔衛生の向上を図ることを目的として、人々の歯・口腔の健康づくりをサポートする国家資格の専門職です。3~4年専門の学校に通って、国家試験に合格しなければなりません。 「私の歯の汚れのつきやすいところを知っていて、いつもメインテナンスをしてくれる、A歯科のB歯科衛生士さん」 「私の歯周病の問題点を知っていて、毎回歯周ポケットの検査と管理をしてくれる衛生士さん」 「もう長いことメインテナンスしてもらっているので、院長同様、きごころの知れた衛生士さん」 「あなたの家族の年齢、歯並びや歯周病の進行具合に合わせて、歯ブラシや補助道具をセレクトしてくれる衛生士さん」 そういった仲良しのかかりつけの衛生士さんがいらっしゃるのであれば、あなたのお口のケアーは成功したも同然です。

歯を磨いて笑顔に磨きをかける 

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 花火大会の会場で見かける、浴衣姿の若者などは はちきれんばかりに若さがあふれています。 20代前後の若い方のはつらつとした笑顔は 美しく輝いていて、若さっていいなと思います。 一方、歯並びやむし歯などトラブルを抱えておられる方の笑顔はどこかぎこちなく、お口の中だけのトラブルにとどまらず、心や体にまで影響を及ぼしているとしたら、大変残念なことです。 いつまでも健康で美しく、その若々しい笑顔を維持するためにもお口の中の手入れが大変重要です。  近年清潔志向が広がっています。住人からみて「ちょっとやりすぎじゃない」と思う場面もありますが、とにかく、OLの皆さんなど ドラマを見ていると昼食後の洗面所で、みんなで歯を磨いています。 こんなに清潔志向で歯磨きの回数が増えているのに、20歳代の独身女性の約77%の方がお口の中に何らかのトラブルを抱えているそうです。 どうやら「磨いているけど。ちゃんと磨けていない」様です。 歯周病というと中高年の病気と思われがちですが、25~34歳の約76%の方が実はすでに歯周病にかかっています。 歯周病の原因や歯周病を助長する要因は様々ありますが、最も大きな原因は歯周病原菌です。  歯垢(プラーク)が毎日除去できていなければ、むし歯、歯周病、口臭などの原因になります。 毎日のご自身のプラークコントトールが歯周病予防では最も大切なことです。 住人は 夜寝る前の「ながら磨き」をお勧めしています。 最初は歯磨きペーストをつけずにブラシだけで、テレビを見ながら・・・、音楽を聴きながら・・・、お風呂に入りながら・・・ いちいち唾を吐きに洗面所に走る必要はありません。さっきまで飲み込んでいた唾液ですから。 最後にペーストをつけて磨いて、洗面所でお口をゆすげば、貴重な時間を歯磨きだけで費やす無駄はなくなります。 それでもどうしても自分では磨けないところができてしまいます。そこはお口のクリーニングのプロに任せましょう。歯科医や歯科衛生士は喜んで歯磨きのアドバイスやクリーニングをしてくれます。 最後に、将来母親になる皆さんへ 将来生まれてくる子供さんの歯を丈夫にするためには、まず皆さんの健康管理が大切です。 現在、北九州市では  妊婦歯科検診 も実施されておりますが、妊娠してからあわてたり、歯のトラブルで困らないように、赤ちゃんができる前に、一度歯医者さん...

医学、医療(臨床)、医療制度はイコールではありません

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  医学 というのは自然科学の1分野として系統だった学問であり、整理された簡潔な条件での実験結果や研究の積み重ねを基にしたものです。( 日本歯周病学会 ) 他の科学同様、基礎的な研究の積み重ねが、歯科医学においても大切です。正しいといえば正しいのですが、それはかなり限られた条件内で成立する話です。  ごく初期のむし歯が再石灰化して治るというのは実験室の中のような限られた環境では事実として再現可能かもしれませんが、実際のすべての患者さんで出来るわけではありません。  医療(臨床)は医学における研究結果などを元に、実際の患者さんの治療に応用することです。( 日本臨床歯周病学会 ) 患者さんの生活環境、希望など様々な要因や条件が付与されるので、医学のように単純には行きません。医学=臨床ではありません。 (そもそも、医学における動物実験でも結果にばらつきがあるのですから) 頻繁に甘くて酸性の炭酸飲料を飲み、歯磨きが完璧に出来ていないお口の環境の中で再石灰化させるのは容易ではありません。 社会保障制度が整備されるまでは臨床(医療)=自由(自費)診療でした。しかし現在では、医療は健康保険制度の制限がある保険診療と自由に医療を提供(享受)できる自由診療とに分けることが出来ます。(現時点では 混合診療 は認められておりません) 医療制度は健康保険に代表される「政治的に決められた医療サービスを国民や市民に提供するシステム」であり、その内容は政治的に決められるので、現時点で医療として応用可能なすべての検査法、治療法をカバーしているわけではありません。 「むし歯になりやすいかどうかの検査法」などはむかしからありますが現在の保険制度では認められていません。  医学が「機械工学」だとすると医療(臨床)は「実際の自動車作り」に例えることができます。機械工学や人間工学などを応用して、皆さんの多様なニーズに応えるべく様々な車種が作られますが、そのうちの一車種が「医療制度」と言うことができます。 現在日本で起こっている医療の問題はほとんどがこの「医療制度」が機能せず崩壊しているからであり、皆さんが政治の力を動かすことが出来れば改善可能です。 北海道 美幌

顎関節症についての補足1

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 前回まで顎関節症について書いてきましたが、若干補足させていただきます。 顎の病気=顎関節症=咬みあわせの病気、という具合に理解されている方が多いと思います。  顎関節症の定義があいまいなのですが、顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害ないし運動障害が認められれば、顎関節症の可能性が高いと思われますが、同様の症状でも区別を要する病気も存在します。 例えば、 三叉神経痛や、ディスキネジア、身体表現性障害などの感覚神経に問題がある場合、 顎関節リュウマチ、外傷性顎関節炎、術後瘢痕拘縮、腫瘍など関節とその周囲の組織に問題がある場合、 筋突起過長症、咀嚼筋腱腱膜過形成症など、関節部分や周囲のパーツの大きさや強さに問題がある場合、 様々な顎関節症と区別が必要な病気が考えられます。 咬みあわせなど、お口の中に原因があり、歯科医がかみ合わせの治療を行うことで改善することが多いのですが、まず、 これらの病気でないことを十分精査して、 噛み合わせなど、お口の中の治療にとりかかられた方がよいのではないかと思います。  かみ合わせが原因であれば、住人のような歯科医の出番ですし、咬みあわせを治療すれば、症状が改善することは十分考えられますが、上記のような病気が原因であれば、当然、咬みあわせだけを治療しても症状は改善しません。 >>> あごがコキコキ、ジャリジャリ音がして、痛くて開きにくいー顎関節症とは 京都 三千院

顎関節症の治療

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 前回まで、顎関節症について書いてきましたが、今回はその治療についてです。以下は住人の一つの意見として、ご理解下さい。  顎関節症の治療法はいろいろな検査をして、どの部分にどんな問題があるかによって選択されます。  治療法は 全身に対するものと顎や歯など局所に対するものに分かれます。  全身療法は、内科医、精神科医、整形外科医と相談しながらやらなければなりません。  局所療法としては、噛み合せを治すことが中心になります。 多くの患者さんはスプリントというマウスピースを上顎あるいは下顎に入れます。 スプリント治療の目的は、 ・かみ合わせが原因であることの確認 ・かみ合わせや関節のストレスなど、為害作用を減少させ、組織のダメージをやわらげ、結果として組織の抵抗性を増加させること ・好ましい噛み合わせの位置を決めるため です。  下あごを3次元的に、安静にしてあるいはご本人が望ましい位置に誘導し、 顎の筋肉の緊張がとけて楽になると、スムーズに顎が動くようになります。 症状がとれたなら、 残っている歯のかみ合わせの調整や矯正、 クラウンやブリッジ、それに入れ歯>など で噛み合わせの再構成(やり直し)を行い、 再び好ましくない噛みあわせに戻らないようにしなければなりません。 顎関節の異常が長期間になると 顎関節の変形や、軟骨の損傷を招くことがあります。 その場合には外科的な手術が必要な場合もあります。 またストレスや性格、精神・心理的な要素が重要視される場合が多くあり、神経科など他科と連携した治療が必要な場合もあります。  一時的にスプリントを入れただけで、自然と症状が取れて、後は何もしなくてもよい場合もあります。 我が家でも、ウソのように症状が改善された患者さんからは大変感謝されます。  一方で、大学の附属病院に勤務していた時代にも顎関節症の患者さんを診察しておりましたが、 治療期間が長期(2年とか)間必要になる場合もあり、慢性化する場合もあります。 治るというより、関節円板が伸びきった状態で、口が開くようになることもすくなくないように思います。 歯を削って噛み合わせを作り直すとうまく行く場合も多くありますが、原因は噛み合わせだけでないだけに、中には必ずしもうまく行かない場合があることも事実です。 スプリントで求めた、ご本人が希望する、噛み合わせの位置が、ご自身...

あごがコキコキ、ジャリジャリ音がして、痛くて開きにくいー顎関節症とは

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 最近あごの関節の不快症状を訴える方が多くなってきました。 その症状は様々です。  例えば、あごが思い通り動かず、食べ物が噛みづらい。 あごを動かすとき、カックン(クリック音)、ギシギシ(クレプタス音)など不快な音がする。 あごの関節に痛みを感じ、口が開けにくい・・・・.etc。  しかも症状はあごの関節ばかりでなく、肩こりとか、腕や指がしびれた感じがするとか、偏頭痛や、耳鳴りなどの耳や鼻に不快な症状を感じる人もいます 。(これらの症状があれば全て顎関節症と言うわけではありません。詳しくは専門医にご相談下さい。) あごの関節はちょうど 臼 (上あご)と 杵 (下あご)のような形をしていて、臼と杵の間に座布団のような柔らかい組織(関節円板)を介在した構造になっています。 ここには、筋肉と関節と神経が集中し、口の中のかみ合わせと連動しています。 しかも、 その下あごは頭や首や肩の筋肉に吊り下げられた、「ハンモック」のような形になっています。 この関節と、筋肉の調和が乱れると様々な症状が出てくるのです。  症状の現れ方、程度など、個人差がかなり強いのも特徴です。 症状は多様で、(開口障害) 口が開かなくなったり、(関節雑音)開けるときに異音がしたり、(関節痛) 咬むときに関節に痛みがあるものや、力が入らず固いものが咬めない事や顎が外れやすくなってしまったりする場合もあります。 顎関節症をわかりやすく分類すると ○そもそも杵と臼の大きさがアンバランスな場合 ○臼と杵と間の座布団の動きに不調和がある場合→コキコキ ○座布団が完全にずれてしまって臼と杵が直接接している場合→ジャリジャリ ○杵をつく人(筋肉やストレスなどのメンタル面)に問題がある場合 ○そのコンビネーション このように様々なあごの関節に関する不具合を症候群として、顎関節症と言います。 つづく 参考文献 新編咬合学事典 日本顎関節学会では顎関節症の疾病概念を、顎関節症とは顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害、関節包、靭帯障害、関節円板障害、変形性関節症などが含まれていると定義(1997)している。 顎関節症についての補足1 顎の病気=顎関節症=咬みあわせの病気、という具合に理解されている方が多いと思います。  顎関節症の定...

顎が痛くて口が開かない-顎関節症の原因

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前回、顎の関節の構造を中心に顎関節症のお話をしてきました。 今回はその原因です。 原因は、いろいろ考えられます。 ◎ 上下の歯の噛み合わせの異常によって関節に症状が出る場合、 精神的緊張やストレスにより異常な食いしばりや歯ぎしりなどがあごの関節に負担を与えている場合、 ◎ 生まれつき関節に形や大きさに問題のある人や、関節部に外傷(強い力やけが)を受けたことがある場合、 ◎ 精神的なストレスや、心理的な問題で 感覚的 に関節やかみ合わせに違和感を感じる場合 など、様々です。 なぜか、女性に多く、20~30歳代に多いと言われています。(それ以降の方は、治ったわけでなく、問題を抱えているが、問題があるなりに何とか生活しているといった方が多いのではないでしょうか) 多くの方は多少かみ合わせに問題があったり、歯ぎしりをしていたりしても、その方の許容範囲内であれば、顎関節症として発症せずに無症状で経過する場合もあります。許容量はヒトにより様々です。 コキコキなっていても、まったく気にならず、口が開きにくくなったりせずに経過する方も多くいらっしゃいます。 しかしながら、 様々な原因の総和が許容範囲を超えたり、 何らかの原因で体の許容範囲が狭くなってしまった場合、 顎関節症として発症することになります。 それでは、どのような場合、治療が必要なのでしょうか。  それぞれの医師で、考え方は違うと思いますが、住人は ◎ 痛くて口が開かない(疼痛)、 ◎ 口が開かなくて食事ができない(開口障害)、 など現実的に我慢できない不具合が在るのであれば、 治療した方がよいと思いますが、いずれにしてもあまりあわてないほうがよいと思います。 口が開かないまま、食事ができずに餓死した人は 今までいないのではないかと思います。 詳しくは専門医にご相談下さい。 あわてないほうがよい理由は他にも、 ◎ 100%結果が保証されている。(100%治る)病気でもありません。矯正治療をしたりかぶせ物をしたり、費用がかかるかもしれません。 ◎ 治療後のかみ合わせを維持するために健全な 歯を削って冠をかぶ せないといけないかもしれません。 ◎ 一時的にかみ合わせが不安定になり、どこで噛んで良いかわからなくなり、益々精神的に不安になるかもしれない。 ので、顎関節症の程度、治療のデメリット等を理解したうえでないと、お勧...

パンドラの箱

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 巷では医師不足の問題が話題になっています。けれども日本の賢明な官僚の皆さんは 昔から今後起こり得る事、問題の本質もすべてすでに把握なさっていたと思います。そして、日本の社会保障問題が パンドラの箱 であり、絶対に自らの手でふたを開けてはならないことも。 救急救命医や産婦人科医不足の問題では少しパンドラの箱のふたが開きつつあるようです。 問題の本質は実は単純です。 医療の財源は 国民のニーズや治療の効果、安全性によってコスト計算されて決められたものではなく、まず医療の財源というのがどんぶり勘定的に決められてしまうのです。その根拠はただ景気と前年度比であったり、GDP比であったりです。その中で歯科医療の治療費が決められているのです。 「これだけのレベルの治療を現在の世の中のルールを遵守して、安心安全に行えばこれだけコストがかかる」と計算されたのではないのです。 その積算根拠のあいまいさが様々なところにしわ寄せとなっているのです。 介護福祉士の賃金の低さが問題になっていますが、しわ寄せと言うのは大抵弱者のところに来ます。(歯科医業は現在は弱者です。)  官僚の皆さんや政治家の皆さんはそろそろ「現在の財源で国民の皆さんに安心、安全良質な医療を提供するのは無理です。」と言ったほうがよいと思うのですが、パンドラの箱を開けるのが怖いのか、現在でも、良質な医療が提供できていることにこの国ではなっているようです。  よく歯科医療の領域でどこからともなく上がってくる動きに、「財源がないので、入れ歯や金属の冠は保険からはずそう」という動きがあります。(歯科医は「保険からはずしたい」とは絶対に思っていません。) もちろん一番困るのは国民の皆さんです。この論理も「まずは財源が第一」であり、国民のニーズは関係ありません。 今の歯科の治療代がほぼ決まった頃は待合室に患者があふれ、「インフォームド・コンセント」などという概念はなかったし、治療も今と比べれば格段に単純で、患者さんの要求も高くありませんでした。極論すれば、歯医者は痛い歯を抜く所でした。  時代の変化に伴い、国民や厚生省と「出来ること」と「出来ないこと」をきちっとした議論をし、目指す医療を提示しなかった歯科医にも問題があります。 国民皆保険になった頃の医療技術と、患者さんとのコミュニケーション、医療安全への要求、美しさへの要求 ...

フロス(糸楊枝)or ダイ(死)-定期健診でバイオフィルムの除去を-

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フロス(糸楊枝)or ダイ(死)-定期健診でバイオフィルムの除去を-  日本の多くの方は歯は年齢とともに悪くなるものとあきらめている節があります。  我が家では定期的なメインテナンスに来院していただいているだけで、歯の病気が悪化せず維持できている方が大勢いらっしゃいます。裏を返せばしっかり治療をしてメインテナンスをしっかり行っていれば、そんなにかんたんに悪くならないということです。(しかも定期健診にお見えになる方はなぜか皆さんお元気です。) アメリカ合衆国ではお口が健康な人でも年に数回、歯科医院でクリーニングをしてもらうのが常識です。なぜなら、公的健康保険が整備されていないため、歯の治療も多くは民間保険です。民間保険の加入条件に年に数回の歯科医院でのメインテナンスが義務づられており、それを守らなければ、保険給付されないのです。 これも裏を返せば、保険会社の統計データーから、健康な人が年に数回歯科医院でクリーニングしていれば、保険会社は損をしない、つまり、加入者にとっては歯の病気のリスクはかなり減らせるということです。 半分脅しのようなアメリカの事情ですが、このことがアメリカ人の歯の健康を維持しているともいえなくはありません。  もちろん、幼稚園のころから教育の中でしっかりブラッシングの重要性をおしえられているのですが。 「フロス(糸楊枝)or ダイ(死)」というキャッチコピーがアメリカにはありました。 フロス、つまり「歯のクリーニングをするか、しないで死を選ぶか」というショッキングな内容ですが、あながち誇張ではないことが最近わかってきました。  糖尿病や心疾患、骨粗しょう症、肺炎、低体重児出産と歯周病との関係は証明されています。最近では肥満などとの関係が示唆されています。 歯周病に罹患している患者さんの歯周ポケットの中にできている潰瘍を全部あわせてひとつにすると手のひらサイズの潰瘍になるそうです。 ちょっとイメージしてみてください。皆さんは胃潰瘍だと10円玉大でも大騒ぎですが、歯周病だと手のひら大の潰瘍が常にあるのです。体に良くないことは容易にお分かりいただけるのではないでしょうか 。  自分は若いのでまだ大丈夫と思っているあなた! 日本人の成人の8割は歯周病にかかっているのです。 >>>平成17年歯科疾患実態調査結果についてへ  もちろん日々の御自分でのプ...

養生訓

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住人の趣味のひとつに仏像見物があるのは以前書きました。見仏していると昔の仏師の芸術的、技術的レベルの高さと完成度に驚くことがたびたびあります。 一方で、有史以来人間進歩しているようで、同じようなことを繰り返していると感じることも少なくありません。 歯に関する事柄でも、昔から鋭い指摘をしている先人はいるものです。  養生訓(ようじょうくん)は、江戸時代、福岡在住の儒学者貝原益軒によって書かれた健康な生活の暮し方についての解説で、彼の著作の中でも最もよく読まれたものである。 以下 森下雅之訳より住人の専門に関する記述を拾ってみました。 巻第五 朝の行い 毎朝、まず熱い湯で目を洗い温める。鼻の中をきれいにする。ぬるま湯で口中をすすいで前日からの汚れを出す。干した塩を使い上下の歯と歯茎を磨き、熱湯を使い十分すすぐ。すすいでいるときに、ぬるま湯で洗った布で顔と手を洗う。~中略~ そのあと、別の塩湯で目と口を洗い直し、口をすすぐ。毎朝、これをしておけば歯は丈夫で老年になっても歯は抜けない。視力も衰えず、老いても眼病にかからず夜でも細かい文字を読んだり書いたりすることができる。 私も毎日これを実行しているので、83歳になっても細かい時を読み書きできるし、歯も1本も抜けていない。そしてつま楊枝も使うこともない。 住人のコメント:現時点で、塩の薬効に関し住人は科学的根拠を持ち合わせませんが、塩入り歯磨き粉が現代でも人気があるところを見ると、何かしら爽快感があり好んで使われている様です。そして「歯と歯茎を磨く」というのも卓見です。 「つま楊枝も使うこともない。」ということから想像するに、おそらく貝原先生は83歳にして歯周病で歯が動いて歯と歯の間に隙間ができる様なこともなく、また歯茎が下がっているわけでもなさそうで、いたって健康なお口だったと思われます。現代人で60歳の方でもこのような方は稀有な存在です。 歯を守る 歯の病は胃からくる。毎日、歯をかちかちと36回くらい噛み合わせると歯が安定して虫歯にならず、歯の病気にもならない。 住人のコメント:「歯の病は胃からくる」というのは現代の科学ではよくわかりませんが、お口が消化器官の始まりであり、消化機能の低下などがお口の状態に影響することは十分考えられます。免疫機能の低下などがお口...

歯科との上手な付き合い方

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  「歯医者なんか生まれてこのかた掛ったことがない」といわれる方もおられると思います。そのようなハッピーな方は今までどおりでよろしいかと思います。今通っておられる歯科医院に十分満足されている方も、多いと思います。そんな方もノー・プロブレムです。  でも、「歯医者さんに何度も通っているのに・・・・」と思ってらっしゃる方もおられるのではないでしょうか。   ある歯科技工士さんが「「歯医者さんに何度も通っているのに歯がぽろぽろとれる」と言っている人がいるので一度みてやってください。」と患者さんを紹介してくださいました。   患者さんは 「私は小さいころから歯医者さんと縁が切れたことがなく、通っても 通っても歯が悪くなるんです」とおっしゃいます。 なるほど 多くの歯が治療されていますが、同時に年齢の割には多くの問題も生じています。残っている歯の本数が少なくなると加速度的に歯が悪くなります:注1) たしかに歯科治療の成功率は100%ではありませんし、まだまだ今後解明し、解決すべき問題もたくさん存在します。 そして 歯科医に不信感を抱いてらっしゃる方も少なくないと思います。 以下の議論も「日本の歯科医の技術や倫理観に全く問題ない」、「患者さんだけに問題がある」といった偏狭な視点で議論するものではありません。気に障るようでしたら、世間知らずの住人の戯言と捨て置いてください。  多くのヒトは歯に問題を抱えることなく生まれてきて、歯が生えてきます。(近年、顎の大きさと歯の大きさにアンバランスがあって問題を生じている若い方もいらっしゃいますが・・・) そして 我々歯科医も「患者さんが生涯にわたって、おいしく食事ができて、会話やカラオケが楽しめ、笑顔で生活できる。」ことを目指しています。 それなのになぜ、そのような残念な結果となる方がいらっしゃるのでしょう。 海外の事情とどこが異なるのでしょう。  そこで皆さんに質問です。 Q1: お互いに信頼できて、 腹を割って話ができる、かかりつけの歯医者さんを持っていますか Q2:病気が悪化する前に歯医者さんに行っていますか Q3:「麻酔が効かない」「痛みにビンカン」などの特殊な事情がなく適切な治療が出来ていますか Q4:治療の中断や、治療の間隔があきすぎたりすることなく、最後まで治療できていますか Q5:「毎回痛む歯だけ治療」といったやり方でな...

歯が20本以上残る70歳以上の高齢者、病気診療費37%少なく

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 以下の記事は毎日新聞に掲載されたものです。 【2008年4月3日】 病気診療費:歯が20本以上残る70歳以上の高齢者、37%少なく /北海道  ◇道国民健康保険団体連合会が調査  20本以上の歯が残る70歳以上の高齢者は、4本以下の人に比べて全身の病気に関係した診療費が37%も少ないことが道国民健康保険団体連合会(札幌市中央区)の調査で分かった。虫歯のない人や歯周病でない人も安く済んでおり、歯は体全体の健康に結びつくことが統計的に立証された。同会は「口を良い状態に保てば健全な食生活を送ることができ、健康で暮らせる」として、歯をよくケアするよう呼び掛けている。  同会は07年5月の道内の歯科レセプト6万4132件、医科レセプト10万3418件を利用し、患者の歯の状態と診療費を調べた。20本以上の歯を持つ人の割合は30%で、診療費は2万2660円だった一方、4本以下は22%で同3万5930円だった。歯が多いほど診療費が安くなる傾向が明確に表れた。 虫歯のない人は2万6410円、治療済みの人は2万7120円とほぼ同額だが、治療をしていないと3万290円と高くなった。歯周病のない人は2万4170円なのに対し、中程度かかっている人は2万6240円、重度は2万7920円と次第に高くなった。【去石信一】 お口の健康と全身の健康が密接な関係があることは従来より言われておりました。それを証明するようにお口の健康なかたの方が医療費がかからないということです。医療費抑制のためにお口の健康を言うのは何か違うような気もしますが、現在の医療制度では、患者さんも一部負担しているわけですから、お口の健康が、家計にも貢献していると言えるのかもしれません。 ここでは全身の健康を維持するためにはまず、お口のケアーが大切であることを理解していただければと思います。 札幌 時計台